2017年03月07日

確定拠出年金、授業料と消費税

★ 川口明彦税理士事務所 事務所だより 2017年3月号 ★


朝夕はまだ冷え込みますが、日差しは春めいてまいりました。
皆様にはお変わりございませんでしょうか。

それでは、今月の事務所だよりをお届けします。


平成29年3月の税務

3/10
●2月分源泉所得税・住民税の特別徴収税額の納付

3/15
●前年分所得税の確定申告
●所得税確定損失申告書の提出
●前年分所得税の総収入金額報告書の提出
●確定申告税額の延納の届出書の提出
●個人の青色申告の承認申請
●前年分贈与税の申告
●国外財産調書の提出
●個人の道府県民税・市町村民税・事業税(事業所税)の申告

3/31
●個人事業者の前年分の消費税・地方消費税の確定申告
●1月決算法人の確定申告<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・(法人事業所税)・法人住民税>
●1月、4月、7月、10月決算法人及び個人事業者(前年12月分)の3月ごとの期間短縮に係る確定申告<消費税・地方消費税>
●法人・個人事業者(前年12月分及び当年1月分)の1月ごとの期間短縮に係る確定申告<消費税・地方消費税>
●7月決算法人の中間申告<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・法人住民税>(半期分)
●消費税の年税額が400万円超の4月、7月、10月決算法人の3月ごとの中間申告<消費税・地方消費税>
●消費税の年税額が4,800万円超の12月、1月決算法人を除く法人の 1月ごとの中間申告 (11月決算法人は2ヶ月分)<消費税・地方消費税>



個人型確定拠出年金の適用拡大


◆新たに個人型に加入できる人
 
 平成29年1月より個人型確定拠出年金(個人型DC)に加入できる人の範囲が広がりました。今まで個人型DCは企業年金の無い会社員と自営業者等が対象でしたが、新たに確定給付年金の制度がある企業の会社員、公務員、専業主婦も加入できるようになりました。
 個人型DCとは「老後資金を積み立てながら現在の税金を軽減する」制度です。愛称もiDeCo(イデコ)と名付けられています。


◆掛け金と所得控除
 
 掛け金は月額5千円からで全額所得控除、所得税や住民税の計算から除外されます。掛け金の上限額が各々の立場で異なります。例えば企業年金の無い会社員の上限額は月23,000円、年間276,000円です。この場合、所得税、住民税が20%(復興税除く)として、この掛け金額にかかる分の20%、55,200円が節税となり年末調整等で戻ります。企業年金のある会社員と公務員の上限額は年144,000円、専業主婦は276,000円。専業主婦は夫が保険料負担をしていれば夫側で所得控除ができます。自営業者は年816,000円(小規模共済等他の所得控除の制度の掛け金と合わせた額)です。


◆運用方法
 
 確定拠出年金は金融商品を運用するので対象は預貯金、投資信託、保険等の金融商品を選びます。運用益は非課税ですが、場合によっては損失が生じる事がないとは言えません。運用コストもあるので「個人型確定拠出年金ナビ」で調べてみましょう。預貯金ならリスクは少ないものの利回りは低く、期待利回りの高い商品もいろいろで選択はなかなか難しいものです。長い目で考えることが必要でしょう。
 口座を開くと金融機関によって違いますが、加入時の手数料3千円程度と管理費が年間1千円から7千円位かかります。


◆受給の時
 
 受給は原則満60歳からで原則中途引き出しはできません。受給時は一時金、年金、両方の併用が選択できます。一時金であれば退職所得控除の対象です。企業の退職金支給時と重なると控除枠を超えてしまうことがあるので注意が必要です。年金受給の場合も公的年金控除の範囲を超えると課税されます。一般的には一時金の方が節税効果は大きいと言われています。



消費税「授業料は非課税と言っても」



◆学校の授業料は消費税が非課税
 
 消費税法では、学校教育につき、授業料・入学検定料・入学金・教科用図書の譲渡等を非課税としています。課税売上となるものは、事業収入や教室賃貸等の資産運用収入などに限られています。また、寄付金収入や補助金収入は不課税売上です。
 そのため、課税売上に対応する課税仕入れは、課税仕入れのうちの一部であり、大半の課税仕入れは非課税売上や不課税売上に対応するものと見なされるため、課税仕入れに係る支払消費税の大半が学校法人の負担となっています。


◆消費税率引き上げの影響
 
 消費税の税率が上がっても、主たる財源である授業料や補助金・寄付金などは消費税がかからない非課税売上や不課税売上であるため、税率引き上げにより収入額が増加するものではありません。
 一方、人件費や借入金利息等以外のほとんどの経費は課税仕入れであり、税率引き上げで支出額は増加します。このことが学校法人の経常的な収支を悪くします。


◆授業料への価格転嫁も現実的には難しい
 
 理屈からすれば、価格転嫁(=授業料等の値上げ)できないことはありませんが、仕入税額控除できない消費税負担分を授業料の値上げに直結させることは大学教育の市場原理から難しいと思われます。結局、消費税負担の増加に対抗する収入増のやり方も個々の学校の個別事情により変わってくるのであり、単純に、価格転嫁すれば解決するということにはつながりません。
 医学部を抱える大学の場合、医療機関の非課税問題も併せ持つため、収入(=授業料・社会保険給付等)の大半が非課税であることにより消費税を仕入税額控除できず、控除対象外消費税(いわゆる損税)が発生する問題が、より深刻と言えます。


◆税制改正要望
 
 日本私立大学団体連合会は平成29年度税制改正要望で、消費税に係る負担軽減のための特例措置の創設を挙げていました。文部科学省からも、過去同様の要望がありました。
 家庭の教育費負担の一層の軽減を図ることを目的とすれば、現状の非課税扱いよりも、仕入税額控除可能なゼロ税率の導入の方がより趣旨に沿うこととなると言えます。


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