2019年07月30日

役員給与としての取り扱いを受ける経済的利益

★ 川口明彦税理士事務所 事務所だより 2019年8月号 ★


梅雨も明け、本格的な夏も始まりましたね。

2009年8月に、このブログで公開し始めた事務所だよりも今号で、10周年となりました。

それでは、今月の事務所だよりをお届けします。


2019年8月の税務

8/13
●7月分源泉所得税・住民税の特別徴収税額の納付

9/2
●6月決算法人の確定申告<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・(法人事業所税)・法人住民税>
●3月、6月、9月、12月決算法人・個人事業者の3月ごとの期間短縮に係る確定申告<消費税・地方消費税>
●法人・個人事業者の1月ごとの期間短縮に係る確定申告<消費税・地方消費税>
●12月決算法人の中間申告<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・法人住民税>(半期分)
●消費税の年税額が400万円超の3月、9月、12月決算法人・個人事業者の3月ごとの中間申告<消費税・地方消費税>
●消費税の年税額が4,800万円超の5月、6月決算法人を除く法人・個人事業者の1月ごとの中間申告(4月決算法人は2ヶ月分)<消費税・地方消費税>
●個人事業者の当年分の消費税・地方消費税の中間申告

○個人事業税の納付(第1期分)
○個人の道府県民税及び市町村民税の納付(第2期分)


労働基準監督署の調査で慌てないために用意しておくものとは

◆今後の法令改正の予定の背景
 
 一億総活躍社会の実現に向けて「働き方改革」が進んでいます。今後の改正は長時間労働の削減のための上限規制、非正規雇用の待遇改善の同一労働・同一賃金へと進んでいきます。


◆労基署の調査の種類
 
 改革に合わせた労基署の監督内容をまとめてみました。
臨検監督:監督官の主要な業務で事業所に立ち入り、関係労働者の労働条件や安全衛生等について調査するもの。原則予告なし。

・法違反が認められた場合は是正勧告
・要改善事項が認められた時は改善指導
・危険性が高い機械設備はその場で使用停止命令等が行われます。
 
 臨検監督には計画的に任意に選定して行われる定期監督、労働者の申告による申告監督、労災発生時に行う災害時監督、悪質・是正が不適切な時の再監督があります。


◆日頃から備えておきたい各書類
 
 調査の順番が回ってきたときもあわてないように、日頃からしっかりとした管理体制が求められます。
 会社の組織図、労働者名簿、賃金台帳、就業規則(諸規程含む)、従業員別の時間外労働・休日出勤の実績資料、勤怠ログ等勤務実績がわかる資料、36協定書、変形労働時間制等の定めをしている場合の労使協定、変形労働時間制のシフト表、年次有給休暇管理簿、労働条件通知書の控え等について

(1)作成・届け出義務

(2)未記載項目がないか

(3)労働時間管理は適正か

(4)割増賃金が正しく支払われているか
をチェックされます。
 
 また、健康診断の実施結果と50人以上事業所の場合は健康診断結果報告書、ストレスチェック実施報告書、安全委員会・衛生委員会の議事録等について安全衛生体制が適正になされているかをチェックされます。


◆指導の多いもの
 
 指導が多いものとして、すべての労働者について客観的な方法での時間把握、みなし労働時間制の不適切運用、36協定を作成せず又は届け出ていない、36協定の労働者代表の不適切選出、名ばかり管理監督者、労働条件通知書を交付していない、未払い残業代等があります。日頃から必要書類を準備しておきましょう。


役員給与としての取り扱いを受ける経済的利益

 税務上、役員給与(または賞与)には金銭で支給されるもののほかに、実質的に役員に対して給与を支給したと同様の経済的効果をもたらすもの(経済的利益)も含まれます。経済的利益の給与認定を受けた場合には法人税、所得税等の課税関係が生じることとなりますので会計処理をする際には留意が必要です。


◆役員の個人的費用を会社が負担した場合

1.役員だけの慰安旅行
 
 役員など特定の者のみを対象とした慰安旅行は、福利厚生目的の旅行でないことから福利厚生費にはなりません。また業務遂行上必要なものと認められないことから交際費にも含まれず、役員に与えた経済的利益として役員給与とされる場合があります。


2.役員の健康診断費用
 
 役員のみを対象とした健康診断の費用は福利厚生費として処理することはできず、役員給与の取り扱いになります。
 福利厚生費として計上するには、(1)役員を含む全社員が診断の対象となっている(年齢による限定は可能)、(2)健診内容が健康管理上必要とされる範囲内のものである、(3)会社から直接費用が支払われる、といった要件を満たす必要があります。


◆役員の資産を時価より高く購入した場合
 
 社長が所有する土地を立地条件の良さや値上がりが見込まれる等の理由で時価よりも高い価額で購入した場合には、購入価額と時価との差額は社長への経済的利益の供与として賞与の取り扱いとなります。
 また、反対に、会社所有資産を時価より低い価額で社長に譲渡した場合にも、資産の時価と譲渡価額との差額は経済的利益として取り扱われます。
 そのほか、会社が役員に物品その他の資産を贈与した場合、役員に対する債務を放棄、または免除した場合、役員に対する金銭の低利貸付け、役員に対して交際費等の名目で支出した金銭でその使途が明らかでないものなども役員給与とされる経済的利益に該当します。
 後々否認されて税金を追徴されないためにも、会計処理の段階でしっかり把握することが重要です。


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