2010年04月12日

中小企業倒産防止共済制度、給与に関する税務調査

★ 川口明彦税理士事務所 事務所だより 2010年4月号 ★


桜の美しい頃もすぎて、これからは葉桜の日々が近づいてきます。

それでは、今月の事務所だよりをお届けします。

◆ 平成22年4月の税務

4月12日
●3月分源泉所得税・住民税の特別徴収税額の納付

4月15日
●給与支払報告に係る給与所得者異動届出(市町村長へ)

4月30日
●2月決算法人の確定申告<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・(法人事業所税)・法人住民税>
●2月、5月、8月、11月決算法人の3月ごとの期間短縮に係る確定申告<消費税・地方消費税>
●8月決算法人の中間申告<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・法人住民税>(半期分)
●法人・個人事業者の1月ごとの期間短縮に係る確定申告<消費税・地方消費税>
●消費税の年税額が400万円超の5月、8月、11月決算法人の3月ごとの中間申告<消費税・地方消費税>
●消費税の年税額が4,800万円超の1月、2月決算法人を除く法人の1月ごとの中間申告(12月決算法人は2ヶ月分)<消費税・地方消費税>
●公共法人等の道府県民税及び市町村民税均等割の申告

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○固定資産課税台帳の縦覧期間
 4月1日から20日、又は最初の固定資産税の納期限のいずれか遅い日以後の日までの期間
○固定資産課税台帳への登録価格の審査の申出の期間
 市町村が固定資産の価格を登録したことを公示した日から納税通知書の交付を受けた日後60日までの期間等
○軽自動車税の納付
○固定資産税(都市計画税)の第1期分の納付



◆ 税制改正の隠れた目玉ー中小企業倒産防止共済制度

 独立行政法人中小企業基盤整備機構の所管する中小企業倒産防止共済制度について今般税制改正の対象になっています。


■中小企業倒産防止共済制度とは
 
 中小企業倒産防止共済制度は、いつ起こるかもしれない「取引先の倒産」というような不測の事態に直面した中小企業に迅速に資金を貸し出しする共済制度です。
 毎月20万円以内の掛金を総額が800万円になるまで積み立てることができます。また加入者は、取引先が倒産した場合に、積み立て掛金総額の10倍の範囲内(最高8千万円まで)で回収困難な売掛債権等の額以内の貸し付けを受けることができます。


■どこが税制改正?
 
 今回の改正項目は、月額掛金と積立限度額が2.5倍に膨らんだことです。
 この共済掛金は全額損金(必要経費)になりますので、年間240万円の費用を数年に亘り創り出せることになりました。留意すべきは、損金(必要経費)になるこの掛金が掛け捨てでないことです。本来は積立金であり、掛け捨ての保険ではないにもかかわらず、毎月の掛金は、税法上損金(法人)または必要経費(個人)に算入できるのです。


■注意すべきこと
 
 解約は自由です。ただし無利息です。40ヶ月以上積み立てれば100%戻ります。40ヶ月以内の解約は損をします。倒産防止共済金を掛金の10倍まで利用しても無利息とはなっていますが、共済金の10分の1の掛金が没収となるので、全体で10%の利息となります。最長期間の5年で返済とすると年利4%に相当します。積立金が無利息であることを考慮すると、高すぎる金利と言えます。
 純粋に節税商品として利用するのが最も有利な利用法といえます。


■税制上の留意点
 
 毎月掛金の損金(必要経費)算入は租税特別措置法に規定されていますが、損金算入に関する明細書の添付がない場合には、適用しない、とされています。法人税の場合は別表十(六)が用意されています。
 また、積立期間40ヶ月以上経過後の任意解約による積立金の全額返還は益金(収入金額)となるので、解約のタイミングも留意事項と言えます。


◆ 給与に関する税務調査


■給与の税金確定の構造
 
 年末調整においては、給与所得者の提出した扶養控除等申告書などに記載された申告内容に基づいて、事務処理がされます。その際、扶養親族の該当性の適否判定は記載者本人がするのであって、記載された内容の適否についての調査義務・調査権限は給与の支払者にはありません。
 ところで、税務署での調査により、記載内容の適正さに疑問が指摘される場合、給与所得者本人にはその通知は送られず、給与支払者に送られてきます。扶養控除等申告書の記載を修正させて年末調整をやり直すことを要求してくるのです。それで、本人が修正に応じ、年末調整がやり直しとなり、不足税額を納付すると、その後不納付加算税や延滞税の追徴がなされます。給与支払者には落ち度がないのに、このペナルティーは理不尽ですが、多くの場合、不正記載者本人に追徴額の転嫁がされているのではないかと思われます。


■不正記載を修正できないときは
 
 不正記載があっても、扶養控除等申告書の記載の修正がない限り、年末調整のやり直しはできませんので、すでに退職してしまった人の場合にはどうすればよいのでしょうか。給与支払者に特に過失がなく、税額を再計算して徴収し直し、納付することもできない場合には、給与支払者をそれ以上追及しない、との通達があります。
 そんな場合に、税務署長が退職した給与所得者本人に対して直接に所得税額の決定をして不足税額とペナルティーの追徴処置をしたという事例がありました。不正申告者を放置しないとの趣旨ですが、この決定処置は奇しくも国税不服審判所にて取消しの憂き目にあっています。
 なぜかというと、この場合のような給与所得者は年末調整されるだけで、確定申告をする義務がなく、義務がない者への税務署長の直接的納税強制の決定には法律の根拠がない、ということです。


■給与の確定申告不要制度の不備
 
 この事例は、別居母親に月額約10万円程度の家賃相当額を援助していたことから扶養親族として届け出ていたというもので、もし、本人が退職しておらず、税務署の指摘にも応ぜず、税務署長が会社宛に追徴処分をし、会社は本人に転嫁する、というような場合には、誰と誰が争うことになるのか、法が不備で混沌としてきそうです。


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川口 明彦 税理士事務所
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