2014年11月07日

生計を一にするとは

★ 川口明彦税理士事務所 事務所だより 2014年11月号 ★

秋も深まり、そろそろ冷え込んで参りました。
お風邪など召されませぬようお願い申し上げます。

それでは、今月の事務所だよりをお届けします。



平成26年11月の税務

11/10
●10月分源泉所得税・住民税の特別徴収税額の納付

11/17
●所得税の予定納税額の減額申請

12/1
●9月決算法人の確定申告<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・(法人事業所税)・法人住民税>
●所得税の予定納税額の納付(第2期分)
●3月、6月、9月、12月決算法人・個人事業者の3月ごとの期間短縮に係る確定申告<消費税・地方消費税>
●法人・個人事業者の1月ごとの期間短縮に係る確定申告<消費税・地方消費税>
●3月決算法人の中間申告<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・法人住民税>(半期分)
●消費税の年税額が400万円超の3月、6月、12月決算法人・個人事業者の3月ごとの中間申告<消費税・地方消費税>
●消費税の年税額が4,800万円超の8月、9月決算法人を除く法人・個人事業者の1月ごとの中間申告(7月決算法人は2ヶ月分)<消費税・地方消費税>
●特別農業所得者の所得税の予定納税額の納付

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○個人事業税の納付(第2期分)



 「生計を一にする」とは?


◆「生計(せいけい)を一(いつ)にする」
 
 税務の話題の中で「生計を一にする」という表現をよく耳にすると思います。
 これは、所得税法、法人税法、相続税法、租税特別措置法などの主要な法令の約40の条文に用いられる税法用語です。
 特に所得税法では、雑損控除や医療費控除などの所得控除の要件を構成するとともに、控除対象配偶者、扶養親族などの定義規定、事業から対価を受ける親族がある場合の必要経費の特例など約20の法令で使われます。
 これほど頻繁に税法に登場する「生計を一にする」という用語ですが、実は具体的な定義を定めた規定はありません。
 所得税基本通達などに、単身赴任者や生活費・学費の仕送りを受けている者は同一の家屋に起居していなくも「生計を一にする」として取扱うなどの、わずかな例が示されているのみで、実務でも判断に迷うものの一つとなっています。


◆消費段階で同一の財布のもとで生活
 
 判例によれば、「生計を一にする」とは、日常生活の糧を共通にしていること、すなわち消費段階で同一の財布のもとで生活していることと解され、これを社会通念に照らして判断されることとなります。
 この場合、同一の家屋で起居している親族が「明らかに互いに独立した生活を営んでいる」という状況証拠が出てこない限りは、これらの親族は、通常は「共通の財布」で生活しているものと推定されます。


◆「明らかに互いに独立した生活」の判断
 
 「明らかに互いに独立した生活を営んでいる」のかどうかは、次のような事項を経済的側面と物理的側面の双方から総合的な見地で判断することになります。

(1)不動産登記の状況(区分所有の場合、独立性が高い)

(2)家賃等の支払いの有無

(3)生活費の負担の状況

(4)家屋の居住状況(玄関、台所、風呂が共有であったり、自由に往来が可能な構造であったりする場合には、独立性が低い)

(5)電気・ガス等のメーター設置状況、電話の使用状況

(6)住民票・国民健康保険上の世帯状況等


◆このような曖昧な概念なのに…
 
 様々なライフスタイルが考えられる現代では「生計を一」の適用範囲も拡大化することが考えられますが、「生計を一にする」こととなったときに、納税者に有利となる規定ばかりでなく、不利となる規定もあるだけに、扱いづらいものとなっています。



ストレスチェック制度創設



◆精神的負荷の程度を把握する制度
 
 精神疾患による労災が増加している事を受けて、厚労省はストレスチェック制度の導入を義務づける法律を平成26年6月19日に成立させました。施行は27年12月を予定しています。
 ストレスチェックとは労働者にアンケートによる検査を行いその結果でどの程度の心理的負荷があるかを把握するものです。


◆制度の概要
 
 この制度は労働者数50名以上の事業場が対象とされ、50人未満の事業場は当分の間、努力義務とされています。50人以上と言えば産業医の選任が義務づけられている事業所規模になりますね。
 ストレスチェックは会社が実施しますが実際のチェックは医師、保健師に依頼します。検査項目は「職業性ストレス簡易調査票」を参考に作られ、実施は年1回程度とされています。
 ストレスチェックの結果は本人に知らされます。検査結果が高ストレスに該当すれば労働者からの申し出で医師の面接指導を実施します。但し、個人情報扱いで原則として会社には開示されません。会社が費用負担をして結果を知らないのは片手落ちというものでしょう。本人の同意があれば結果を把握できますが、結果が良くなければその原因を探り、働く部署や労働時間の検討も必要となってくるでしょう。


◆効果のほどは未知数
 
 会社がこのチェックを義務づけられても労働者がそれに応じなければ強制する事はできません。定期健康診断の受診義務ほどの拘束力はないと言えます。
 今回のチェック項目案として挙げられているものには「性格検査」「適性検査」「自傷行為」等の項目は含まれません。企業がこのチェックに期待するとすれば「メンタルヘルス不調者の早期発見」ですが、それは主たる目的でないとされています。目的は「一時予防としての本人のストレスへの気づきや職場改善」であるとしているからです。検査結果を把握するには本人の同意が必要ですが、部門単位等で個人情報でなければ会社は直接評価結果を把握できるので職場の環境改善には活かせるかもしれません。


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川口 明彦 税理士事務所
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