2024年02月05日
中小企業のM&Aと労務DD
★ 川口明彦税理士事務所 事務所だより 2024年2月号 ★
立春とは名ばかりの厳しい寒さが続いております。
いかがお過ごしでしょうか。
それでは、今月の事務所だよりをお届けします。
2024年2月の税務
2月13日
●1月分源泉所得税・住民税の特別徴収税額の納付
2月29日
●12月決算法人及び決算期の定めのない人格なき社団等の確定申告<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・(法人事業所税)・法人住民税>
●3月、6月、9月、12月決算法人の3月ごとの期間短縮に係る確定申告<消費税・地方消費税>
●法人の1月ごとの期間短縮に係る確定申告<消費税・地方消費税>
●6月決算法人の中間申告<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・法人住民税>(半期分)
●消費税の年税額が400万円超の3月、6月、9月決算法人の3月ごとの中間申告<消費税・地方消費税>
●消費税の年税額が4,800万円超の11月、12月決算法人を除く法人の1月ごとの中間申告(10月決算法人は2ヶ月分)<消費税・地方消費税>
○前年分贈与税の申告(申告期間:2月1日から3月15日まで)
○前年分所得税の確定申告(申告期間:2月16日から3月15日まで)
○固定資産税(都市計画税)の第4期分の納付(2月中において市町村の条例で定める日)
中小企業等のM&Aと労務DD
◆中小企業等を取り巻く喫緊の課題
中小企業庁の調べでは、2025年までに70歳を超える中小企業及び小規模事業者(以下「中小企業等」)の経営者は約245万人となり、うち約半数の127万社が後継者未定となっています。この127万社という数字は、日本全体の企業数の1/3に当たります。
これをそのまま放置すると、中小企業等の廃業の急増により、2025年までの累計で、約650万人の雇用と約22兆円のGDPが失われる可能性があるとしています。これらの課題解決の一つとして、第三者への事業承継(本稿では「M&A」とします)のニーズが高まりつつあります。
◆デューデリジェンスとは
デューデリジェンス(Due Diligence)とは、Due(当然・正当)Diligence(精励・努力)という意味で、投資を行うに当たり、投資先企業の価値やリスクなどを事前に調査することを言います。
M&Aにおけるデューデリジェンス(以下「DD」)の目的は、買収企業の経営環境、事業内容などを調査し、財務状況・収益力について分析を行い、法務面の問題点・リスクを洗い出して、より正確に企業実態や事業運営の手法を把握することです。その種類には財務DD、法務DDなどがあり、労務DDも重要な位置を占めます。
◆労務DDの定義とその内容
労務DDについては、法律等での明確な定義はありませんが、一般的に「労働に由来する潜在債務を調査すること」となります。
ここでの潜在債務とは、簿外債務と偶発債務を合わせた概念になります。簿外債務とは、本来、費用として財務諸表に計上されなければならない債務を言い、未払残業代や加入漏れの社会保険料などが挙げられます。偶発債務とは、将来、想定外の出来事で発生し得る債務を言い、解雇の無効や管理監督者と認められないなどによるバックペイ(遡っての給与等の支払い)、労働災害やハラスメント問題による会社の損害賠償リスクなどがこれに当たります。
近年、第三者への事業承継(M&A)をスムーズに遂行するため、また、売り先企業が自社をより高額で売却するため、さらには人的資本経営の高まりからも、事前に潜在化しているリスク対応としての労務DDが注目されています。
お葬式と税金
◆故人をしのぶ儀式と税金
お葬式は亡くなった方へのお別れやお見送りの儀式です。お通夜や告別式の流れ、宗教宗派によって変わる作法、ご挨拶の言葉など、日常生活とは異なるマナーが多く、少々苦手という方も多いのではないでしょうか。また、残されたご遺族には相続税等、税金周りの手続きが必要になる場合もあります。お葬式と税の関係を確認してみましょう。
◆相続税を計算するとき
相続税を計算するときは、負担した葬式費用を遺産総額から差し引けます。例えば、
(1)お葬式や葬送に際し、火葬や埋葬、納骨をするためにかかった費用
(2)ご遺体やご遺骨の回送にかかった費用
(3)お葬式の前後に生じた費用で通常葬式にかかせない費用(例えばお通夜などにかかった費用など)
(4)お葬式にあたりお寺などに対して読経料などのお礼をした費用
(5)遭難事故等の場合のご遺体の捜索または運搬費用
上記は相続税を計算するときに差し引けるものとなります。逆に、
(1)香典返しの費用
(2)墓石や墓地の費用
(3)初七日や法事の費用
については、葬式費用ではないと判定されるため、遺産総額から差し引くことはできません。
◆香典・弔慰金と税金
香典については故人ではなく喪主やご遺族に支払われるものという扱いになっています。前述した葬儀費用とはならない「香典返し」は故人が返しているわけでもないし、故人が貰っているわけでもないので、葬儀費用とはならない、という解釈です。また、社会通念上相当と認められる香典については所得税及び贈与税は非課税となっています。
会社から出る弔慰金については、実質上退職手当金等に該当する部分については相続税の対象です。また、それ以外の部分については明確な取り決めがあり、
(1)業務上の死亡の場合:給与3年分
(2)業務上の死亡でない場合:給与半年分
を超える弔慰金については、相続税の対象となります。
立春とは名ばかりの厳しい寒さが続いております。
いかがお過ごしでしょうか。
それでは、今月の事務所だよりをお届けします。
2024年2月の税務
2月13日
●1月分源泉所得税・住民税の特別徴収税額の納付
2月29日
●12月決算法人及び決算期の定めのない人格なき社団等の確定申告<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・(法人事業所税)・法人住民税>
●3月、6月、9月、12月決算法人の3月ごとの期間短縮に係る確定申告<消費税・地方消費税>
●法人の1月ごとの期間短縮に係る確定申告<消費税・地方消費税>
●6月決算法人の中間申告<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・法人住民税>(半期分)
●消費税の年税額が400万円超の3月、6月、9月決算法人の3月ごとの中間申告<消費税・地方消費税>
●消費税の年税額が4,800万円超の11月、12月決算法人を除く法人の1月ごとの中間申告(10月決算法人は2ヶ月分)<消費税・地方消費税>
○前年分贈与税の申告(申告期間:2月1日から3月15日まで)
○前年分所得税の確定申告(申告期間:2月16日から3月15日まで)
○固定資産税(都市計画税)の第4期分の納付(2月中において市町村の条例で定める日)
中小企業等のM&Aと労務DD
◆中小企業等を取り巻く喫緊の課題
中小企業庁の調べでは、2025年までに70歳を超える中小企業及び小規模事業者(以下「中小企業等」)の経営者は約245万人となり、うち約半数の127万社が後継者未定となっています。この127万社という数字は、日本全体の企業数の1/3に当たります。
これをそのまま放置すると、中小企業等の廃業の急増により、2025年までの累計で、約650万人の雇用と約22兆円のGDPが失われる可能性があるとしています。これらの課題解決の一つとして、第三者への事業承継(本稿では「M&A」とします)のニーズが高まりつつあります。
◆デューデリジェンスとは
デューデリジェンス(Due Diligence)とは、Due(当然・正当)Diligence(精励・努力)という意味で、投資を行うに当たり、投資先企業の価値やリスクなどを事前に調査することを言います。
M&Aにおけるデューデリジェンス(以下「DD」)の目的は、買収企業の経営環境、事業内容などを調査し、財務状況・収益力について分析を行い、法務面の問題点・リスクを洗い出して、より正確に企業実態や事業運営の手法を把握することです。その種類には財務DD、法務DDなどがあり、労務DDも重要な位置を占めます。
◆労務DDの定義とその内容
労務DDについては、法律等での明確な定義はありませんが、一般的に「労働に由来する潜在債務を調査すること」となります。
ここでの潜在債務とは、簿外債務と偶発債務を合わせた概念になります。簿外債務とは、本来、費用として財務諸表に計上されなければならない債務を言い、未払残業代や加入漏れの社会保険料などが挙げられます。偶発債務とは、将来、想定外の出来事で発生し得る債務を言い、解雇の無効や管理監督者と認められないなどによるバックペイ(遡っての給与等の支払い)、労働災害やハラスメント問題による会社の損害賠償リスクなどがこれに当たります。
近年、第三者への事業承継(M&A)をスムーズに遂行するため、また、売り先企業が自社をより高額で売却するため、さらには人的資本経営の高まりからも、事前に潜在化しているリスク対応としての労務DDが注目されています。
お葬式と税金
◆故人をしのぶ儀式と税金
お葬式は亡くなった方へのお別れやお見送りの儀式です。お通夜や告別式の流れ、宗教宗派によって変わる作法、ご挨拶の言葉など、日常生活とは異なるマナーが多く、少々苦手という方も多いのではないでしょうか。また、残されたご遺族には相続税等、税金周りの手続きが必要になる場合もあります。お葬式と税の関係を確認してみましょう。
◆相続税を計算するとき
相続税を計算するときは、負担した葬式費用を遺産総額から差し引けます。例えば、
(1)お葬式や葬送に際し、火葬や埋葬、納骨をするためにかかった費用
(2)ご遺体やご遺骨の回送にかかった費用
(3)お葬式の前後に生じた費用で通常葬式にかかせない費用(例えばお通夜などにかかった費用など)
(4)お葬式にあたりお寺などに対して読経料などのお礼をした費用
(5)遭難事故等の場合のご遺体の捜索または運搬費用
上記は相続税を計算するときに差し引けるものとなります。逆に、
(1)香典返しの費用
(2)墓石や墓地の費用
(3)初七日や法事の費用
については、葬式費用ではないと判定されるため、遺産総額から差し引くことはできません。
◆香典・弔慰金と税金
香典については故人ではなく喪主やご遺族に支払われるものという扱いになっています。前述した葬儀費用とはならない「香典返し」は故人が返しているわけでもないし、故人が貰っているわけでもないので、葬儀費用とはならない、という解釈です。また、社会通念上相当と認められる香典については所得税及び贈与税は非課税となっています。
会社から出る弔慰金については、実質上退職手当金等に該当する部分については相続税の対象です。また、それ以外の部分については明確な取り決めがあり、
(1)業務上の死亡の場合:給与3年分
(2)業務上の死亡でない場合:給与半年分
を超える弔慰金については、相続税の対象となります。
Posted by taxman at 14:52│Comments(0)
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