2024年07月23日

マイホーム売却の特例、サイバーセキュリティ

★ 川口明彦税理士事務所 事務所だより 2024年8月号 ★


猛暑の毎日でございますが、いかがお過ごしでしょうか。
熱中症にはくれぐれもお気をつけください。

それでは、今月の事務所だよりをお届けします。


2024年8月の税務


8月13日
●7月分源泉所得税・住民税の特別徴収税額の納付

9月2日
●6月決算法人の確定申告<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・(法人事業所税)・法人住民税> 
●3月、6月、9月、12月決算法人・個人事業者の3月ごとの期間短縮に係る確定申告<消費税・地方消費税>
●法人・個人事業者の1月ごとの期間短縮に係る確定申告<消費税・地方消費税>
●12月決算法人の中間申告<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・法人住民税>(半期分)
●消費税の年税額が400万円超の3月、9月、12月決算法人・個人事業者の3月ごとの中間申告<消費税・地方消費税>
●消費税の年税額が4,800万円超の5月、6月決算法人を除く法人・個人事業者の1月ごとの中間申告(4月決算法人は2ヶ月分)<消費税・地方消費税>
●個人事業者の消費税・地方消費税の中間申告

○個人事業税の納付(第1期分)(8月中において都道府県の条例で定める日)
○個人の道府県民税及び市町村民税の納付(第2期分)(8月中において市町村の条例で定める日)



マイホーム売却時の特例



◆マイホームには税の特例がもりだくさん
 
 住宅ローンを借り入れて、住宅の新築・取得を行った場合受けられる住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、皆さんご存じかと思いますが、マイホームに関連する税制は売却した際にも様々な状況に応じて特例が設けられています。今回は横断的にどんな特例があるのかを見てみましょう。


◆マイホームを譲渡して売却益が出た時

(1)居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例:マイホーム(居住用財産)を売った時、所有期間の長短に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる。

(2)マイホームを売った時の軽減税率の特例:所有期間が10年を超えている場合、長期譲渡所得税率は通常15%(+住民税5%)であるのに対して、6,000万円までの部分については10%(+住民税4%)で計算することができる。

(3)特定の居住用財産の買換えの特例:特定のマイホームを売って、代わりのマイホームに買い換えた時、一定要件のもとに、譲渡益に対する課税を将来に繰り延べることができる。
 
 (1)と(2)は併用が可能ですが、(3)も含め、売却益が出て特例を利用した場合、住宅ローン控除との併用はできません。


◆マイホームを譲渡して売却損が出た時

(4)マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例:マイホーム(旧居宅)を売却して、新たにマイホーム(新居宅)を購入した場合、旧居宅の譲渡損失が出た場合、一定の要件を満たしていれば、譲渡損失をその年の給与所得等、他の所得と損益通算することができる。また、損益通算しても控除しきれない分は、譲渡の年の翌年以後3年内は繰越控除が受けられる。

(5)特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例:住宅ローンのあるマイホームを住宅ローンの残高より低い価額で売却して譲渡損失が出た場合、一定の要件を満たせば他の所得と損益通算できる。また、譲渡の年の翌年以後3年内は繰越控除が受けられる。
 
 (4)は買い換えの場合に限られますが、(5)は新たにマイホームを買わなくても受けられる特例です。また、売却損が出た時に利用する特例は、住宅ローン控除併用可です。


サイバー保険とサイバーセキュリティ対策


◆税務署・国税庁を騙るメール
 
 e-Taxの普及に伴い、国税庁や税務署を騙る偽メールも増えています。e-Taxを装ったメールでリンク先もe-Taxの画面を模している場合もあり、うっかりアクセスしてパスワード等を入力してしまうと、犯罪に利用される恐れもあります。

(1)国税庁からのメール本文には、支払い催促や延滞税の金額等は記載されない

(2)メール本文のリンクは一見正常に見えるが、リンク先が偽装されている可能性も視野に入れ、e-Taxへのアクセスはメールから行わない
など、見分ける方法や対策を知っておきましょう。また、一部の保険会社は被害に遭った時に心強いサイバーリスクに特化した保険を出しています。どんな内容なのか見てみましょう。


◆サイバー保険の補償内容
 
 サイバー保険の補償対象事故は主に「情報漏洩」「ネットワーク所有・使用・管理に起因する業務阻害」「サイバー攻撃に起因する身体障害・財物損壊」です。契約プランによって取扱いは異なりますが、被保険者の損害賠償金・訴訟費用の補填、サイバー事故に起因して一定期間内に生じた事故原因調査・コールセンター設置・記者会見・見舞金の支払・法律相談・再発防止策の策定といった各種費用の補填、ネットワークを構成するIT機器等の停止による利益損害や営業継続費用の補填など、多岐にわたる補償プランがあるようです。
 また、平時における事故防止対策等のサポートを受けられるものや、ルールの策定・従業員に対する研修や教育支援・リスク診断・セキュリティソフトの導入支援等を行ってくれるものもあります。


◆サイバーセキュリティ対策してますか?
 
 サイバーセキュリティ対策は保険だけではありません。独立行政法人情報処理推進機構では、中小企業の情報セキュリティ対策ガイドラインを公開していますから、まずはそちらで理解を深めるのも良いでしょう。また、対策に取り組むことを自己宣言する「SECURITY ACTION」は、各種補助金申請の要件となっている場合があります。
 中小企業のサイバーセキュリティ対策に不可欠な各種サービスをワンパッケージで提供するサービス「サイバーセキュリティお助け隊」は、2024年のIT導入補助金でも活用が可能なので、この機会に一度検討してみてはいかがでしょうか。

  
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2024年06月24日

住宅ローン控除の要件

★ 川口明彦税理士事務所 事務所だより 2024年7月号 ★


本格的な夏の前に、木々の緑が色濃くなってまいりました。
蒸し暑い日が続いておりますが、お身体ご自愛下さい。

それでは、今月の事務所だよりをお届けします。


2024年7月の税務

7月10日
●6月分源泉所得税・住民税の特別徴収税額の納付(年2回納付の特例適用者は1月から6月までの徴収分を7月10日までに納付)

7月16日
●所得税の予定納税額の減額申請

7月31日
●所得税の予定納税額の納付(第1期分)
●5月決算法人の確定申告<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・(法人事業所税)・法人住民税>
●2月、5月、8月、11月決算法人の3月ごとの期間短縮に係る確定申告<消費税・地方消費税>
●法人・個人事業者の1月ごとの期間短縮に係る確定申告<消費税・地方消費税>
●11月決算法人の中間申告<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・法人住民税>(半期分)
●消費税の年税額が400万円超の2月、8月、11月決算法人の3月ごとの中間申告<消費税・地方消費税>
●消費税の年税額が4,800万円超の4月、5月決算法人を除く法人・個人事業者の1月ごとの中間申告(3月決算法人は2ヶ月分)<消費税・地方消費税>

○固定資産税(都市計画税)の第2期分の納付(7月中において市町村の条例で定める日)



住宅ローン控除の要件



◆住宅ローン控除って何?
 
 個人が住宅ローン等を利用して、マイホームの新築、取得または増改築等をし、自己の居住の用に供したときは、一定要件下で、住宅ローンの年末残高を基準として、所得税を控除することができます。正式名称は「住宅借入金等特別控除」といいます。
 新築の場合の住宅ローン控除が受けられる要件を確認してみましょう。


◆住宅ローン控除の要件(新築の場合)

・住宅取得後6か月以内に居住していること
・控除を受ける年分の年末まで引き続き居住の用に供していること
・床面積50(特例は40)平方メートル以上かつ居住用に2分の1以上を供していること
・住宅ローン控除を受ける年の合計所得が2,000(特例は1,000)万円以下であること
・10年以上のローンであり、民間の金融機関や住宅金融支援機構などの住宅ローンであること
・2つ以上住宅がある場合は、主として居住の用に供する住宅であること
・居住用財産の譲渡特例等、一定の譲渡所得の特例を居住年および前2年の3年間受けていないこと
・居住年の翌年以後3年以内に、居住した住宅以外の一定の財産を譲渡し、一定の譲渡所得の特例を受けていないこと
・住宅の取得(土地等の取得を含む)は、生計を一にする親族や特別な関係のある者からの取得でないこと
・贈与による住宅の取得でないこと


◆「住んでいるか」が重要
 
 要件の通り、住宅ローン控除は住んでいなければ受けられません。ただし転勤で居住を移す場合は、単身赴任等で家族が引き続き居住していれば住宅ローン控除は継続して受けられます。
 「住宅ローン控除も受けられないし、賃貸にして利益を」と考える方もいるかもしれませんが、賃貸にした場合は金融機関の住宅ローンは特別金利等の優遇がなされている関係で規約違反となり、一括返済を求められることが一般的です。
 また、悪質な不動産投資会社等が、顧客に対して「居住用と言えばローンが通る」等の話をもちかけていたケースも報道されています。「知らなかった」では済まされませんので、ご注意ください。


令和6年5月送付分から納付書の送付対象見直し


◆税務署が納付書を送ってこない
 
 国税庁は、キャッシュレス納付の利用拡大に取り組んでいます。具体的な目標も掲げており、令和7年までに国税のキャッシュレス納付の割合を40%とするよう、キャッシュレス納付の利用推奨や利便性の向上のため、様々な施策を行っています。
 その中で行政コスト抑制の観点を加えた理由に基づき、令和6年5月以降に送付する分から、e-Taxにより申告書を提出している法人の方などに、納付書の事前送付を取りやめるとしています。


◆事前送付が行われない方

〇e-Taxにより申告書の提出をしている法人の方
〇e-Taxによる申告書の提出が義務化されている法人の方(資本金が1億円超や通算法人等の特定の法人)
〇e-Taxで「予定納税額の通知書」の通知を希望された個人の方
〇「納付書」を使用しない以下の手段により納付されている法人・個人の方

・ダイレクト納付・振替納税・インターネットバンキング等による納付・クレジットカード納付・スマホアプリ納付・コンビニ納付(2次元コード)
 以上の方には、納付書の事前送付が行われません。また、源泉所得税の徴収高計算書や、消費税の中間申告書兼納付書については引き続き送付する予定と前書きしておきつつも、「電子申告及びキャッシュレス納付を是非ご利用ください」と利用を推奨しています。


◆申告は電子で納付は紙の場合
 
 申告はe-Taxで行うものの、納付書を利用して納税しているという法人の方がいらっしゃると思いますが、この5月から「納付書が送られてこない!」と慌てないように気をつけましょう。
 事前送付は行わないものの、納付書自体は所轄税務署に連絡すれば郵送してもらえますし、直接所轄税務署や金融機関(在庫があれば)に出向けば入手できます。
 ただ、事前送付があった頃と比較してみると、手間もかかることですし、そろそろキャッシュレス納付を考えてもよい頃合いかもしれませんね。

  
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2024年05月27日

経営者保証ガイドライン

★ 川口明彦税理士事務所 事務所だより 2024年6月号 ★


日中はもう汗ばむ陽気となりました。
暑い季節に向かいますゆえ、なにとぞご自愛ください。

それでは、今月の事務所だよりをお届けします。


2024年6月の税務


6月10日
●5月分源泉所得税・住民税の特別徴収税額・納期の特例を受けている者の住民税の特別徴収税額(前年12月〜当年5月分)の納付

6月17日
●所得税の予定納税額の通知

7月1日
●4月決算法人の確定申告<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・(法人事業所税)・法人住民税>
●1月、4月、7月、10月決算法人の3月ごとの期間短縮に係る確定申告<消費税・地方消費税>
●法人・個人事業者の1月ごとの期間短縮に係る確定申告<消費税・地方消費税>
●10月決算法人の中間申告<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・法人住民税>(半期分)
●消費税の年税額が400万円超の1月、7月、10月決算法人の3月ごとの中間申告<消費税・地方消費税>
●消費税の年税額が4,800万円超の3月、4月決算法人を除く法人・個人事業者の1月ごとの中間申告(2月決算法人は2ヶ月分)<消費税・地方消費税>
●国外財産調書・財産債務調書の提出

○個人の道府県民税及び市町村民税の納付(第1期分)(6月、8月、10月及び1月中(均等割のみを課する場合にあっては6月中)において市町村の条例で定める日)


リスキリングとリカレント教育


◆DX時代に必要なリスキリング
 
 一般的にリスキリングやリカレント教育はともに「学び直し」と定義されることが多い言葉ですが背景や目的は違っています。
 経済産業省はリスキリングを「新しい職業に就くため、あるいは今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために必要なスキルを獲得する/させること」と定義しています。必ずしも「リスキリング=DX教育」ではありませんが、「企業が戦力的に新しいビジネスに対応するために不可欠なスキル・知識の獲得を促す」という企業視点です。実践に重きを置き、DX化のための新たなスキルの習得をすることを言います。リスキリングは社会の要請により学びを提供する視点が強い言葉ですが、学ぶ本人の主体性なしに成功はありません。


◆リカレント教育とは
 
 リスキリングと並行して語られることが多いのが「リカレント教育」です。「循環する、繰り返す」という意味を持ち、業務と並行しながら学ぶリスキリングと違い、学校教育から離れた後も必要なタイミングで仕事と教育を繰り返し、個人の学びに主体が置かれている点が違います。
 リカレント教育は人生100年時代におけるQOL向上でしょう。働く期間が延びればスキルや知識のアップデートも必要になるということです。学ぶことで専門性や希少性が高まります。日本では今まで年功序列制や終身雇用が一般的でOJTなどの育成をしてきましたが、これからのジョブ型雇用に変化する時代にはリカレント教育の関心が高くなるでしょう。


◆企業のリスキリングが注目されている理由
 
 2020年のダボス会議で「リスキリング革命」が主要な議題となり、それは「第4次産業革命の技術変化に対応するため2030年までに全世界で10億人により良い教育、スキル、仕事を提供する」というものです。2022年に日本では首相がリスキリングのための支援制度を政策の中に盛り込むことを表明し、人への投資が重要であるとの考えを示しました。企業がリスキリングを推進するメリットは、1.ワークエンゲージメント(仕事に対してのポジティブで充実した心理状態)の向上、2.自立型人材の育成、3.社内業務に精通した人材に取り組んでもらえる、などのメリットがあります。


経営者保証ガイドライン〜早期廃業と再チャレンジ〜


◆「会社の破産」=「経営者の破産」?
 
 会社の経営が厳しく、廃業を考えているとしましょう。経営者の個人保証がある場合、会社が破産すると、経営者も破産するしかないのでしょうか。いいえ、違います。
 法人が破産しても、「経営者保証に関するガイドライン」を活用し、保証債務を整理することで、個人破産を回避し、再出発できる可能性があります。ガイドラインに基づき保証債務を整理した場合、経営者に一定の資産を残すことを認めています。


◆経営者保証に関するガイドライン適用要件
 
 ガイドラインに基づく保証債務整理を申し出る場合は、以下のような要件を充足している必要があります。

●法人(主債務者)が法的整理(破産、民事再生等)や私的整理及びこれに準じる手続(準則型私的整理手続)を開始申立て済みである。
●対象債権者に経済合理性が期待できる。
●法人及び保証人が弁済について誠実であり、対象債権者の請求に応じ、財産状況等について適時適切に開示している。


◆早期決断のメリット
 
 廃業等を早期決断することによって、事業が毀損する前に債務整理をすることで、売掛債権回収の極大化が図られるほか、早期売却価格ではなく市場価格で不動産等を売却できます。また、金融機関に経済合理性が生まれ、インセンティブ資産を手元に残せる可能性があります。


◆インセンティブ資産とは
 
 現時点で清算することにより、将来に清算した場合よりも、回収見込み額が増加する額がインセンティブ資産の上限となります。

(1)一定期間の生計費に相当する額の資産
(2)華美でない自宅
(3)その他の資産(個別事情を考慮して判断)


◆どこに相談すればいいの?
 
 まずは、取引金融機関や中小企業活性化協議会、REVIC(地域経済活性化支援機構)、支援専門家(弁護士、税理士等)等へご相談ください。早めの相談がガイドラインに基づく保証債務整理や、廃業だけでなく、事業再生や事業承継など、取り得る選択肢を広げることが期待されます。  
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2024年05月04日

インターハイ2024 東部大会準決勝vs飛龍高

2024年5月4日、インターハイ東部大会準決勝 沼津東vs飛龍高を観戦に、愛鷹多目的競技場に行きました。

沼津東1-1飛龍高  PK5-4

同点に追いつき、PK合戦となりました。


この時期のサッカー観戦は、気持ちがいいです。









  
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Posted by taxman at 19:14Comments(0)サッカー

2024年04月20日

相続時精算課税  令和6年改正

★ 川口明彦税理士事務所 事務所だより 2024年5月号 ★

若葉が目にまぶしい季節になりました。
季節の変わり目でございますので、お身体を大切になさってください。

それでは、今月の事務所だよりをお届けします。


2024年5月の税務


5月10日
●4月分源泉所得税・住民税の特別徴収税額の納付

5月15日
●特別農業所得者の承認申請

5月31日
●個人の道府県民税及び市町村民税の特別徴収税額の通知
●3月決算法人の確定申告<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・(法人事業所税)・法人住民税>
●3月、6月、9月、12月決算法人・個人事業者の3月ごとの期間短縮に係る確定申告<消費税・地方消費税>
●法人・個人事業者の1月ごとの期間短縮に係る確定申告<消費税・地方消費税>
●9月決算法人の中間申告<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・法人住民税>(半期分)
●消費税の年税額が400万円超の6月、9月、12月決算法人・個人事業者の3月ごとの中間申告<消費税・地方消費税>
●消費税の年税額が4,800万円超の2月、3月決算法人を除く法人・個人事業者の1月ごとの中間申告(1月決算法人は2ヶ月分、個人事業者は3ヶ月分)<消費税・地方消費税>
●確定申告税額の延納届出に係る延納税額の納付

○自動車税(種別割)の納付(5月中において都道府県の条例で定める日)
○鉱区税の納付(5月中において都道府県の条例で定める日)


相続時精算課税贈与者が贈与した年に死亡した場合



◆相続時精算課税制度とは
 
 相続時精算課税制度は、受贈者の選択により、60歳以上の父母、祖父母などの直系尊属から18歳以上の直系卑属である推定相続人又は孫が贈与を受けたとき、課税価格から2500万円の特別控除後の残額に20%の税率を乗じた額を課税し、贈与者が死亡したときは、相続税額を計算する過程で先に課税された贈与税相当額を相続税額から控除して精算するものです。
 相続税の申告書において相続時精算課税贈与を受けた財産の価額を相続税の課税価格に加算します。相続税には基礎控除(3000万円と法定相続人1人当たり600万円)があるので、贈与税額が相続税額を超えるときは、先に申告納付した贈与税の還付を受けることができます。また相続時精算課税制度は贈与者ごとに、父母の双方からそれぞれ贈与を受けることもできます。


◆贈与者が死亡した年の贈与は相続税で申告
 
 相続時精算課税の適用を初めて受ける者は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに、相続時精算課税選択届出書を贈与税の申告書と一緒に提出します。
 相続時精算課税の適用を初めて受ける年に贈与者が死亡したときは、相続時精算課税選択届出書を贈与を受けた年の翌年3月15日(贈与税の申告期限)又は相続開始の日の翌日から10か月を経過する日(相続税の申告期限)のいずれか早い日までに相続税の納税地の税務署長に提出します。
 このとき贈与税の申告書の提出は要さず、相続税の申告書を提出します。


◆令和6年施行の改正内容
 
 令和5年度税制改正により、令和6年1月1日以後の相続時精算課税贈与には、110万円の基礎控除が創設されました。110万円以下の贈与の場合は、贈与税の申告は不要となりますが、相続時精算課税選択届出書の提出は必要です。
 また相続時精算課税贈与を受けた土地・建物が相続税の申告期限までの間に、令和6年1月1日以後に災害により一定の被害を受けた場合は、相続税の課税価格に加算する額の計算の際、被災価額(保険金等で補てんされた金額を差引き後)を贈与時の価額から控除できます。


◆届出書の提出もれは暦年課税で思わぬ負担
 
 相続時精算課税の適用を受けようとするとき、相続時精算課税選択届出書の提出をうっかり忘れると暦年課税が適用され、思わぬ税負担が生じますので注意しましょう。


  
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2024年04月06日

申告書の収受印

★ 川口明彦税理士事務所 事務所だより 2024年4月号 ★

春の暖かい日差しが気持ちのいい季節になりました。
いかがお過ごしでしょうか。

それでは、今月の事務所だよりをお届けします。


2024年4月の税務

4月10日
●3月分源泉所得税・住民税の特別徴収税額の納付

4月15日
●給与支払報告に係る給与所得者異動届出

4月30日
●公共法人等の道府県民税及び市町村民税均等割の申告
●2月決算法人の確定申告<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・(法人事業所税)・法人住民税>
●2月、5月、8月、11月決算法人の3月ごとの期間短縮に係る確定申告<消費税・地方消費税>
●法人・個人事業者の1月ごとの期間短縮に係る確定申告<消費税・地方消費税>
●8月決算法人の中間申告<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・法人住民税>(半期分)
●消費税の年税額が400万円超の5月、8月、11月決算法人の3月ごとの中間申告<消費税・地方消費税>
●消費税の年税額が4,800万円超の1月、2月決算法人を除く法人の1月ごとの中間申告(12月決算法人は2ヶ月分)<消費税・地方消費税>

○軽自動車税(種別割)の納付(4月中において市町村の条例で定める日)
○固定資産税(都市計画税)の第1期分の納付(4月中において市町村の条例で定める日)
○固定資産課税台帳の縦覧期間(4月1日から20日又は最初の固定資産税の納期限のいずれか遅い日以後の日までの期間)
○固定資産課税台帳への登録価格の審査の申出(市町村が固定資産の価格を登録したことを公示した日から納税通知書の交付を受けた日後3月を経過する日までの期間等)




令和7年1月から控えは印なしに


◆申告書等の控えに収受日付印を押さない
 
 国税庁は令和6年1月4日に、令和7年1月以降は申告書等の控えに収受日付印の押捺を行わないこととする、と発表しました。対象となる「申告書等」とは、国税に関する法律に基づく申告、申請、請求、届出その他の書類の他、国税庁・国税局・税務署に提出される全ての文書とのことです。
 令和7年1月からの書面申告等における申告書等の送付時には、申告書等の正本(提出用)のみを提出してください、とWeb上でお願いしています。また、必要に応じて自身で控えを作成、提出年月日の記録・管理をするようにも呼びかけています。


◆申告書等の提出事実を証明する方法
 
 例えば個人が融資を受ける、奨学金の申請を行う、保育園の手続きする、等の際に確定申告書の控えを要求されることがあります。ただ、この控えについては「収受印があること」が控えたりうる要件であり、収受印がない控えについては、個人の収入等が証明できないため、各種手続きに利用できない可能性が大です。
 オンラインサービスを利用せず、紙媒体で効力のある収入証明を手に入れる場合には、税務署に対して「保有個人情報の開示請求」を行うか、「納税証明書の交付請求」を行う必要があります。
 個人情報の開示請求は手数料300円、納税証明書は税目ごと1年度1枚につき400円です。


◆オンラインなら無料
 
 e-Taxを利用した申告であれば、申告等データの送信が完了した後に、税務署からの受信通知がメッセージボックスに格納されます。ここから申告書等のPDFファイルを無料でダウンロードすることができ、こちらには受付日時等が記載されますから、旧来の控えの役割を果たすものが欲しい人はe-Taxを活用しなさいね、という風に聞こえます。
 国税庁は税務行政のデジタル・トランスフォーメーション(DX)を進めているとしていて、その一環の措置とのことなのですが、便利な機能が増えて利便性が向上する方が多い一方、インターネット等のサービスを上手く使えない方にとっては不便になることは確かです。また、不便ならまだしも「手続き等ができない人」が出てきてしまわないか、少し心配になります。  
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Posted by taxman at 15:12Comments(0)

2024年03月25日

3月25日に思う

毎年、3月25日に思うことがあります。

「3月25日は、中央大学の卒業式だな。」

大学卒業後数年は、全力で駆け抜けたので、思わなかったのですが、
自分の税理士事務所を持つようになってからは、3月25日には思うようになりました。

毎年3月25日は、中央大学のキャンパスから卒業式がYoutubeでライブ配信されています。

全国にいらっしゃる卒業生の家族が見るのでしょう。


僕の卒業式も今日のように、小雨まじりで少し肌寒く、Junのコートを着て卒業式に出かけました。
入学式で聴いたシベリウスの『フィンランディア』を卒業式でも聴けて良かったです。
芸術が、文化が、今まで歩いてきた道が私を支えてくれました。

中央大学のユニバーシティ・メッセージは、「行動する知性」とのことです。


今日も仕事の休憩時間に少しだけ、スマホで卒業式のライブ配信を見ました。

大学の卒業式は、大事にしたしね。

3月25日は、特別な日かな。

大学時代より、卒業後の方が勉強しているでしょう。

どれだけの山を越えてきただろう。いくつの『河を渡った』だろう。

Spilitは、『世代』を超えて行く。

Soul to Soul .

今日のように、原点を確認してみるのも悪くはない。

清志郎、教授、素晴らしい楽曲を残してくれてありがとう。

  
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Posted by taxman at 15:01Comments(0)税理士日記

2024年02月23日

借地権、旅費交通費のインボイス

★ 川口明彦税理士事務所 事務所だより 2024年3月号 ★

春の陽気が待ち遠しい今日この頃、いかがお過ごしですか。

弊事務所のBGMも「春のJazz」チャンネルになりました。

外は寒いですが、事務所の中は春の気配です。

それでは、今月の事務所だよりをお届けします。


2024年3月の税務

3月11日
●2月分源泉所得税・住民税の特別徴収税額の納付

3月15日
●前年分贈与税の申告(申告期間:2月1日から3月15日まで)
●前年分所得税の確定申告(申告期間:2月16日から3月15日まで)
●所得税確定損失申告書の提出
●前年分所得税の総収入金額報告書の提出
●確定申告税額の延納の届出書の提出(延納期限:5月31日)
●個人の青色申告の承認申請(1月16日以後新規業務開始の場合は、その業務開始日から2ヶ月以内)
●個人の道府県民税・市町村民税・事業税(事業所税)の申告

4月1日
●個人事業者の前年分の消費税・地方消費税の確定申告
●1月決算法人の確定申告<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・(法人事業所税)・法人住民税>
●1月、4月、7月、10月決算法人及び個人事業者(前年12月分)の3月ごとの期間短縮に係る確定申告<消費税・地方消費税>
●法人・個人事業者(前年12月分及び当年1月分)の1月ごとの期間短縮に係る確定申告<消費税・地方消費税>
●7月決算法人の中間申告<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・法人住民税>(半期分)
●消費税の年税額が400万円超の4月、7月、10月決算法人の3月ごとの中間申告<消費税・地方消費税>
●消費税の年税額が4,800万円超の12月、1月決算法人を除く法人の1月ごとの中間申告(11月決算法人は2ヶ月分)<消費税・地方消費税>


親の借地の底地部分を子供が取得したとき
 

 親が高齢になり、1人暮らしを始めると、子供としては親の介護に加え、実家の整理が気になるところです。敷地が借地である場合には、借地権の売却を考えるかもしれません。


◆単独での売却は難しい
 
 しかし、地主に借地権を買い取ってほしいと依頼すると、反対に借地人の側で土地を買い取ってもらいたいと言われてしまうかもしれません。
 そこで、借地人の子供が土地(底地)を地主から買い取り、親の借地権と一緒に売却する方法があります。もともと借地となっている土地を買ってくれる人は、通常望めません。地主も単独では底地を買ってくれる人を見つけられません。権利の制約されている土地は、そもそも取得の対象から敬遠されてしまうことでしょう。


◆贈与課税に注意!
 
 子供が土地を地主から買い取って取得した場合、それまで親は地主に地代を支払っていても、土地が子供の所有となった場合、通常、親子間で地代を授受することはなくなります。この時、親の借地権は子供に移転してしまうので、親から子供への贈与となり、贈与課税を受ける可能性が生じます。


◆税務署に申出書を提出して贈与税を回避
 
 そこで贈与課税を回避するため、子供の住所地の所轄税務署長に、引続き借地権者は親であるとして「借地権者の地位に変更のない旨の申出書」を、借地権者の親と土地の所有者である子供の連署で提出することができます。この場合、借地権は親に残り、贈与課税の問題は発生せず、将来、親の財産を相続するときに、改めて親の建物と借地権が相続財産となって相続税が課税されます。


◆不動産仲介業者に売却を依頼する方法も
 
 ところで、上記のように、子供が借地のもととなる土地を地主から取得しなくても、借地人と地主が借地権と土地を共同で売却する方法もあります。買主は所有権を取得できるので売却しやすくなります。もっとも、自分たちだけで地主と交渉し、買主を探すのは困難ですので、不動産仲介業者に依頼し、地主に共同売却を提案してもらい、不動産仲介業者の販売ルートを活用して、売却してもらうこともできます。
 ただし、買取り転売業者が買主となるときは、安く買いたたかれてしまうリスクを負いますので、業者の選定には注意が必要です。


従業員の旅費交通費精算と適格請求書(=インボイス)の保存


◆旅費交通費にかかる3つのインボイス特例
 
 適格請求書等保存方式の下では、請求書等の受領が困難な理由がある場合を除き、インボイスの保存が仕入税額控除の要件となっています。困難なものの中で、普段の経理実務で発生する旅費交通費に関するものに、下記の3つの特例があります。

(1)公共交通機関特例
 
 3万円未満の公共交通機関(船舶、バスまたは鉄道)での旅客運送では、仕入側の会社は、帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます。適用には、帳簿に「公共交通機関特例」等との記載が必要です。

(2)入場券等回収特例
 
 3万円以上の公共交通機関利用で簡易請求書の記載事項が記載された乗車券が回収される場合は、通常の記載事項に加え、帳簿に「入場券等回収特例」等と記載のほか、公共交通機関の住所等の記載も必要です。

(3)出張旅費特例
 
 会社が従業員に出張旅費等を支給する場合には、「その旅行に通常必要であると認められる部分」の金額は、帳簿のみの保存で仕入税額控除OKです。適用するには、通常の記載事項に加え、帳簿に「出張旅費等特例」などと記載することが必要となります。


◆旅費規程に基づく立替経費精算書での精算
 
 複雑にすると混乱しますので、これまで社内で使ってきた経費精算システムを踏襲し、新たに必要となった事項のみ追加する方が良いでしょう。仕入れの相手先名の横にインボイス番号を記載する欄を設け、近郊の公共交通機関利用の場合はそこに「公共交通機関特例」と記載するなどです。
 課税仕入れの相手方を従業員とし、従業員が個人で取得した適格請求書まで辿れるようにしておけば、旅費交通費精算のインボイス保存の問題に対処できます。各社で処理フローを想定し、従業員に周知して、早いうちに慣れてもらいましょう。


◆会計システムのエラーメッセージへの対応
 
 会計ソフトのインボイス制度への対応で、「課税仕入れとしていますが登録事業者ではありません」や「取引金額が1万円未満のため全額仕入控除できます(少額特例対象会社)」などのエラーメッセージでその都度作業が止まってしまうことがあります。それでなくともインボイス番号の確認作業で経理担当の作業量は大幅に増えています。
 各社で環境は違いますが、自社のエラーメッセージ対応策を見つけ、無駄な時間をできるだけ回避するようにしましょう。  
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2024年02月05日

中小企業のM&Aと労務DD

★ 川口明彦税理士事務所 事務所だより 2024年2月号 ★


立春とは名ばかりの厳しい寒さが続いております。
いかがお過ごしでしょうか。

それでは、今月の事務所だよりをお届けします。


2024年2月の税務

2月13日
●1月分源泉所得税・住民税の特別徴収税額の納付

2月29日
●12月決算法人及び決算期の定めのない人格なき社団等の確定申告<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・(法人事業所税)・法人住民税>
●3月、6月、9月、12月決算法人の3月ごとの期間短縮に係る確定申告<消費税・地方消費税>
●法人の1月ごとの期間短縮に係る確定申告<消費税・地方消費税>
●6月決算法人の中間申告<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・法人住民税>(半期分)
●消費税の年税額が400万円超の3月、6月、9月決算法人の3月ごとの中間申告<消費税・地方消費税>
●消費税の年税額が4,800万円超の11月、12月決算法人を除く法人の1月ごとの中間申告(10月決算法人は2ヶ月分)<消費税・地方消費税>

○前年分贈与税の申告(申告期間:2月1日から3月15日まで)
○前年分所得税の確定申告(申告期間:2月16日から3月15日まで)
○固定資産税(都市計画税)の第4期分の納付(2月中において市町村の条例で定める日)


中小企業等のM&Aと労務DD


◆中小企業等を取り巻く喫緊の課題
 
 中小企業庁の調べでは、2025年までに70歳を超える中小企業及び小規模事業者(以下「中小企業等」)の経営者は約245万人となり、うち約半数の127万社が後継者未定となっています。この127万社という数字は、日本全体の企業数の1/3に当たります。
 これをそのまま放置すると、中小企業等の廃業の急増により、2025年までの累計で、約650万人の雇用と約22兆円のGDPが失われる可能性があるとしています。これらの課題解決の一つとして、第三者への事業承継(本稿では「M&A」とします)のニーズが高まりつつあります。


◆デューデリジェンスとは
 
 デューデリジェンス(Due Diligence)とは、Due(当然・正当)Diligence(精励・努力)という意味で、投資を行うに当たり、投資先企業の価値やリスクなどを事前に調査することを言います。
 M&Aにおけるデューデリジェンス(以下「DD」)の目的は、買収企業の経営環境、事業内容などを調査し、財務状況・収益力について分析を行い、法務面の問題点・リスクを洗い出して、より正確に企業実態や事業運営の手法を把握することです。その種類には財務DD、法務DDなどがあり、労務DDも重要な位置を占めます。


◆労務DDの定義とその内容
 
 労務DDについては、法律等での明確な定義はありませんが、一般的に「労働に由来する潜在債務を調査すること」となります。
 ここでの潜在債務とは、簿外債務と偶発債務を合わせた概念になります。簿外債務とは、本来、費用として財務諸表に計上されなければならない債務を言い、未払残業代や加入漏れの社会保険料などが挙げられます。偶発債務とは、将来、想定外の出来事で発生し得る債務を言い、解雇の無効や管理監督者と認められないなどによるバックペイ(遡っての給与等の支払い)、労働災害やハラスメント問題による会社の損害賠償リスクなどがこれに当たります。
 近年、第三者への事業承継(M&A)をスムーズに遂行するため、また、売り先企業が自社をより高額で売却するため、さらには人的資本経営の高まりからも、事前に潜在化しているリスク対応としての労務DDが注目されています。


お葬式と税金


◆故人をしのぶ儀式と税金
 
 お葬式は亡くなった方へのお別れやお見送りの儀式です。お通夜や告別式の流れ、宗教宗派によって変わる作法、ご挨拶の言葉など、日常生活とは異なるマナーが多く、少々苦手という方も多いのではないでしょうか。また、残されたご遺族には相続税等、税金周りの手続きが必要になる場合もあります。お葬式と税の関係を確認してみましょう。


◆相続税を計算するとき
 
 相続税を計算するときは、負担した葬式費用を遺産総額から差し引けます。例えば、

(1)お葬式や葬送に際し、火葬や埋葬、納骨をするためにかかった費用
(2)ご遺体やご遺骨の回送にかかった費用
(3)お葬式の前後に生じた費用で通常葬式にかかせない費用(例えばお通夜などにかかった費用など)
(4)お葬式にあたりお寺などに対して読経料などのお礼をした費用
(5)遭難事故等の場合のご遺体の捜索または運搬費用
 
 上記は相続税を計算するときに差し引けるものとなります。逆に、
(1)香典返しの費用
(2)墓石や墓地の費用
(3)初七日や法事の費用
については、葬式費用ではないと判定されるため、遺産総額から差し引くことはできません。


◆香典・弔慰金と税金
 
 香典については故人ではなく喪主やご遺族に支払われるものという扱いになっています。前述した葬儀費用とはならない「香典返し」は故人が返しているわけでもないし、故人が貰っているわけでもないので、葬儀費用とはならない、という解釈です。また、社会通念上相当と認められる香典については所得税及び贈与税は非課税となっています。
 会社から出る弔慰金については、実質上退職手当金等に該当する部分については相続税の対象です。また、それ以外の部分については明確な取り決めがあり、

(1)業務上の死亡の場合:給与3年分

(2)業務上の死亡でない場合:給与半年分

を超える弔慰金については、相続税の対象となります。  
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2024年01月16日

消費税2割特例、会社役員の社会保険

★ 川口明彦税理士事務所 事務所だより 2024年1月号 ★

新たな年を迎え、皆様にとってご多幸がありますようお祈りいたしております。
本年も希望にあふれる一年になるといいですね。

それでは、今月の事務所だよりをお届けします。


2024年1月の税務

1月10日
●前年12月分源泉所得税・住民税の特別徴収税額の納付(年2回納付の特例適用者は前年7月から12月までの徴収分を1月22日までに納付)

1月31日
●支払調書の提出
●源泉徴収票の交付
●固定資産税の償却資産に関する申告
●11月決算法人の確定申告<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・(法人事業所税)・法人住民税>
●2月、5月、8月、11月決算法人の3月ごとの期間短縮に係る確定申告<消費税・地方消費税>
●法人・個人事業者の1月ごとの期間短縮に係る確定申告<消費税・地方消費税>
●5月決算法人の中間申告<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・法人住民税>(半期分)
●消費税の年税額が400万円超の2月、5月、8月決算法人の3月ごとの中間申告<消費税・地方消費税>
●消費税の年税額が4,800万円超の10月、11月決算法人を除く法人・個人事業者の1月ごとの中間申告(9月決算法人は2ヶ月分)<消費税・地方消費税>
●給与支払報告書の提出

○給与所得者の扶養控除等申告書の提出(本年最初の給与支払日の前日)
○個人の道府県民税及び市町村民税の納付(第4期分)(1月中において市町村の条例で定める日)


2割特例の適用に「不適用届出書」提出が必要な場合がある


◆令和5年10月31日付国税庁の周知依頼
 
 インボイス制度を機に免税事業者からインボイス発行事業者として課税事業者になった事業者には「2割特例」という3年間の納税の経過措置が設けられています。
 これに関して、国税庁から、「インボイス発行事業者の登録申請書のほか、インボイス制度開始の日(令和5年10月1日)を含む課税期間に係る『消費税課税事業者選択届出書』を提出している場合には、課税時間の末日までに『課税事業者選択不適用届出書』を提出しないと2割特例が適用されなくなるから要注意!!」ということを周知してもらうよう日本税理士会連合会宛に依頼がありました。


◆何らかの理由で選択していたら再度検討を
 
 インボイス制度を機に免税事業者からインボイス発行事業者として課税事業者になる場合には、インボイス発行事業者の登録申請書を提出すれば、インボイス制度開始の日(令和5年10月1日)からインボイス発行事業者となり、同日から課税事業者となっています。同日からの適用であれば、「消費税課税事業者選択届出書」の提出は不要でした。
 しかしながら、何らかの理由(=たとえば、令和5年10月1日より前に設備投資等がありその消費税還付目的があったなど)で、「消費税課税事業者選択届出書」を提出していた場合には、国税庁からの周知にある追加手続きをすべきか否か、再度、納税額のシミュレーションをし直して、対応を確認する必要があります。
 予定通り設備投資等がなされていれば当初の選択通りでよいかもしれませんが、経済事情の悪化等で設備投資が先延ばしされていた場合などには、見積納税額の計算のし直しが必要となるでしょう。


◆ギリギリまで検討できるが早めに対応を
 
 通常、消費税の課税選択等の適用申請は、適用を希望する「課税期間の初日の前日までに」とされています。
 しかしながら、経過措置関連では、「課税期間の末日までに」という措置が取られており、今回の「2割特例適用のための『課税事業者選択不適用届出書』の提出も課税期間の末日までに」とされています。
 どちらが得なのか、損をしないのかのシミュレーションをする時間は課税時間の末日までありますが、通信環境システムの不具合などで遅れることのないように、早めに対応した方が良いでしょう。


会社役員の社会保険加入は義務?


◆社会保険適用範囲の拡大で加入該当者増
 
 企業や一定の団体などで働く人は原則社会保険に加入します。パートやアルバイト等で勤務の時間や日数が少なく加入しない場合もありますが、最近は適用範囲が広がり加入該当者は増えています。
 社会保険は生活や仕事で起こる様々なリスクに備えるための制度です。病気やケガ、介護、失業、高齢になった時の生活保障等の事象が起こった時に給付を行い、生活を支えます。健康保険、介護保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険があります。一方雇用されていない役員はどのような加入条件なのかをみてみたいと思います。


◆社会保険加入の条件は
 
 まず社会保険の加入の条件を確認します。法人は基本的に社会保険に加入する必要があります。会社を設立した時は「適用事業所」となります。ただし、以下の時は適用事業所にはなりません。

・従業員が5人未満の個人事業所、理美容業、飲食業など

・農林漁業の個人事業所
 
 続いてそこに働く人が社会保険の加入条件を満たしているかどうかです。対象となる人は会社の代表者、会社の役員(一定の条件有)、正社員、パートやアルバイトで会社の1週間の所定労働時間の4分の3以上の労働時間、労働日数で働く人です。
 ただし、4分の3未満でも従業員101人以上の企業(2024年10月から51人以上)で働く人で週の所定労働時間が20時間以上、勤務期間が2か月以上の見込み、月額賃金8万8千円以上で学生以外の人は対象となります。


◆会社役員の社保加入の判断は?

・役員報酬がない場合、加入義務はない

・役員報酬が払われていれば加入対象
 ただし、非常勤の役員に加入義務はない

・定期的に出勤するなど、常勤の役員か

・役員会等への参加、経営に参画している

・仕事内容に見合った役員報酬

・他の会社との兼務はあるか等
 
 また、会社役員は基本的に労災保険・雇用保険の対象外ですが労災保険は特別加入制度があります。また、兼務役員などで一部は労働者の業務を行っているときは労災保険や雇用保険も対象にされる場合があります。「兼務役員雇用実態証明書」を所轄のハローワークに提出しておきましょう。

  
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