2010年02月08日
配偶者控除、不動産取引と民法
★ 川口明彦税理士事務所 事務所だより 2010年 2月号 ★
立春が過ぎ、暦の上では春とはいえ
冬の寒さが続いておりますが、いかがお過ごしでしょうか。
それでは、今月の事務所だよりをお届けします。
◆ 平成22年2月の税務
2月10日
●1月分源泉所得税・住民税の特別徴収税額の納付
3月1日
●前年12月決算法人(決算期の定めのないもの含む)の確定申告<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・(法人事業所税)・法人住民税>
●3月、6月、9月、12月決算法人の3月ごとの期間短縮に係る確定申告<消費税・地方消費税>
●6月決算法人の中間申告<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・法人住民税>(半期分)
●法人の1月ごとの期間短縮に係る確定申告<消費税・地方消費税>
●消費税の年税額が400万円超の3月、6月、9月決算法人の3月ごとの中間申告<消費税・地方消費税>
●消費税の年税額が4,800万円超の11月、12月決算法人を除く法人の1月ごとの中間申告(10月決算法人は2ヶ月分)<消費税・地方消費税>
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○固定資産税(都市計画税)の第4期分の納付
◆ 配偶者控除を考える
民主党政権の「控除から手当へ」の転換による子ども手当創設に伴い、廃止される予定の配偶者控除ですが、子どものいない専業主婦世帯では負担が増えるということで賛否あります。
そもそも、配偶者控除とは、どのようなものでしょうか?
■創設の経緯
配偶者控除は、事業所得者が家族従業員に支払う給料を必要経費に算入することとのバランスから、サラリーマン世帯の妻が家事育児など家庭において夫を助けるといった内助の功を評価するという立法趣旨のもと、1961年に創設されました。
そのため、青色申告専従者給与の受給者や事業専従者は控除対象配偶者になることはできません。
■不合理な規定
サラリーマンの場合、妻のパート年収が103万円以下であれば配偶者控除を受けられるのに対し、個人事業主の場合、妻への給料支給額が103万円以下でも、配偶者控除を受けられません。
個人事業主の妻も、夫の事業に従事した上で家事を行っているのが普通だと思います。サラリーマンの妻や専業主婦の家事のみを内助の功として評価するのは、明らかに不合理です。
■内縁の妻は?
所得税法は、民法の規定による配偶者と限定していますので、社会保険の扶養に入っていたり、家族手当の支給対象になっていたとしても、内縁の妻は控除対象配偶者にはできません。これも不合理と言えます。
■一夫多妻の場合は?
アフリカなどの一部の国では一夫多妻制を認めています。日本では、婚姻の成立は各当事者の本国法によることとされているので、一夫多妻は法的に認められます。
では、配偶者控除を38万×妻の人数分受けられるかというとそうではありません。
なぜなら、所得税法では、控除対象配偶者を「有する場合」には38万円を控除すると規定されているからです。ちなみに、扶養控除の場合は、扶養親族一人につき38万円を控除すると規定されています。
◆ 民法の不常識と税務対応
■不動産取引の危険負担
不動産取引では、売買契約をしてから、実際に土地や建物の引渡しを受けるまでに数週間~数か月がかかります。もしこの間に契約した建物が売主買主のどちらにも責任のない原因(類焼や放火)で焼失してしまったとしたらどうなるでしょうか?
誰が損害の責任を取るかということですが、常識的には、契約は解除されるだけ、と思うのではないでしょうか。すなわち、売主責任です。
■危険負担の民法の定め
ところが、民法は意外にも、買主責任と規定しています。
たとえ売買対象の建物が無くなってしまっても、買主は売買代金のすべてを支払わなくてはなりません。これに対して、売主は損害賠償も代わりの建物も用意する必要がありません。買主にとっては怖い規定です。
■実際の契約では
民法のこの規定は強行規定ではないので、実際の不動産の売買契約書ではほとんど、常識に合わせて、民法と異なる特約条項を定めるようにしています。すなわち、引渡しまでは売主、引渡し以降は買主の責任とし、買主に解除権を与えています。
■税と会計の売買処理時期
会計の売買処理の認識時期の原則は物件の引渡しのときです。税法も同じ考えで、引渡しのときに売上日、取得日とすることを原則としています。
すなわち、現実の不動産取引の常識多数派の基準と一致しています。ただし、特約の有無にかかわらず、です。
■特約なしの場合は
買主に危険負担がある契約書の場合、物件の引渡しの有無にかかわらず、売主には売却代金が確実に入ってくることになり、買主は確実に物件代金の支払義務を履行しなければなりません。
そうすると、この場合には、契約日を売上日、取得日とすることが理にかなっているようにみえます。
■税の例外取扱い
そういうことを踏まえて、契約の日を収入計上時期としてもよい、という税務通達があります。税は民法基準にも歩調を合わせています。特約があった場合も、です。
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川口 明彦 税理士事務所
〒410-0823 静岡県沼津市我入道東町90番地
http://www.kaikei-home.com/kawaguchi/
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立春が過ぎ、暦の上では春とはいえ
冬の寒さが続いておりますが、いかがお過ごしでしょうか。
それでは、今月の事務所だよりをお届けします。
◆ 平成22年2月の税務
2月10日
●1月分源泉所得税・住民税の特別徴収税額の納付
3月1日
●前年12月決算法人(決算期の定めのないもの含む)の確定申告<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・(法人事業所税)・法人住民税>
●3月、6月、9月、12月決算法人の3月ごとの期間短縮に係る確定申告<消費税・地方消費税>
●6月決算法人の中間申告<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・法人住民税>(半期分)
●法人の1月ごとの期間短縮に係る確定申告<消費税・地方消費税>
●消費税の年税額が400万円超の3月、6月、9月決算法人の3月ごとの中間申告<消費税・地方消費税>
●消費税の年税額が4,800万円超の11月、12月決算法人を除く法人の1月ごとの中間申告(10月決算法人は2ヶ月分)<消費税・地方消費税>
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○固定資産税(都市計画税)の第4期分の納付
◆ 配偶者控除を考える
民主党政権の「控除から手当へ」の転換による子ども手当創設に伴い、廃止される予定の配偶者控除ですが、子どものいない専業主婦世帯では負担が増えるということで賛否あります。
そもそも、配偶者控除とは、どのようなものでしょうか?
■創設の経緯
配偶者控除は、事業所得者が家族従業員に支払う給料を必要経費に算入することとのバランスから、サラリーマン世帯の妻が家事育児など家庭において夫を助けるといった内助の功を評価するという立法趣旨のもと、1961年に創設されました。
そのため、青色申告専従者給与の受給者や事業専従者は控除対象配偶者になることはできません。
■不合理な規定
サラリーマンの場合、妻のパート年収が103万円以下であれば配偶者控除を受けられるのに対し、個人事業主の場合、妻への給料支給額が103万円以下でも、配偶者控除を受けられません。
個人事業主の妻も、夫の事業に従事した上で家事を行っているのが普通だと思います。サラリーマンの妻や専業主婦の家事のみを内助の功として評価するのは、明らかに不合理です。
■内縁の妻は?
所得税法は、民法の規定による配偶者と限定していますので、社会保険の扶養に入っていたり、家族手当の支給対象になっていたとしても、内縁の妻は控除対象配偶者にはできません。これも不合理と言えます。
■一夫多妻の場合は?
アフリカなどの一部の国では一夫多妻制を認めています。日本では、婚姻の成立は各当事者の本国法によることとされているので、一夫多妻は法的に認められます。
では、配偶者控除を38万×妻の人数分受けられるかというとそうではありません。
なぜなら、所得税法では、控除対象配偶者を「有する場合」には38万円を控除すると規定されているからです。ちなみに、扶養控除の場合は、扶養親族一人につき38万円を控除すると規定されています。
◆ 民法の不常識と税務対応
■不動産取引の危険負担
不動産取引では、売買契約をしてから、実際に土地や建物の引渡しを受けるまでに数週間~数か月がかかります。もしこの間に契約した建物が売主買主のどちらにも責任のない原因(類焼や放火)で焼失してしまったとしたらどうなるでしょうか?
誰が損害の責任を取るかということですが、常識的には、契約は解除されるだけ、と思うのではないでしょうか。すなわち、売主責任です。
■危険負担の民法の定め
ところが、民法は意外にも、買主責任と規定しています。
たとえ売買対象の建物が無くなってしまっても、買主は売買代金のすべてを支払わなくてはなりません。これに対して、売主は損害賠償も代わりの建物も用意する必要がありません。買主にとっては怖い規定です。
■実際の契約では
民法のこの規定は強行規定ではないので、実際の不動産の売買契約書ではほとんど、常識に合わせて、民法と異なる特約条項を定めるようにしています。すなわち、引渡しまでは売主、引渡し以降は買主の責任とし、買主に解除権を与えています。
■税と会計の売買処理時期
会計の売買処理の認識時期の原則は物件の引渡しのときです。税法も同じ考えで、引渡しのときに売上日、取得日とすることを原則としています。
すなわち、現実の不動産取引の常識多数派の基準と一致しています。ただし、特約の有無にかかわらず、です。
■特約なしの場合は
買主に危険負担がある契約書の場合、物件の引渡しの有無にかかわらず、売主には売却代金が確実に入ってくることになり、買主は確実に物件代金の支払義務を履行しなければなりません。
そうすると、この場合には、契約日を売上日、取得日とすることが理にかなっているようにみえます。
■税の例外取扱い
そういうことを踏まえて、契約の日を収入計上時期としてもよい、という税務通達があります。税は民法基準にも歩調を合わせています。特約があった場合も、です。
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川口 明彦 税理士事務所
〒410-0823 静岡県沼津市我入道東町90番地
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Posted by taxman at 11:33
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