2013年05月10日
株式譲渡課税の変遷、解雇予告手当と和解金
★ 川口明彦税理士事務所 事務所だより 2013年5月号 ★
吹き抜ける風がなんとも心地よい季節となりました。
それでは、今月の事務所だよりをお届けします。
平成25年5月の税務
5/10
●4月分源泉所得税・住民税の特別徴収税額の納付
5/15
●特別農業所得者の承認申請
5/31
●3月決算法人の確定申告<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・(法人事業所税)・法人住民税>
●個人の道府県民税及び市町村民税の特別徴収税額の通知
●3月、6月、9月、12月決算法人・個人事業者の3月ごとの期間短縮に係る確定申告<消費税・地方消費税>
●9月決算法人の中間申告<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・法人住民税>(半期分)
●法人・個人事業者の1月ごとの期間短縮に係る確定申告<消費税・地方消費税>
●消費税の年税額が400万円超の6月、9月、12月決算法人・個人事業者の3月ごとの中間申告<消費税・地方消費税>
●消費税の年税額が4,800万円超の2月、3月決算法人を除く法人・個人事業者の1月ごとの中間申告(1月決算法人は2ヶ月分、個人事業者は3ヶ月分)<消費税・地方消費税>
●確定申告税額の延納届出に係る延納税額の納付
-----------------------------------------------
○自動車税の納付
○鉱区税の納付
株式譲渡課税の変遷
◆消費税の導入がきっかけ
株式譲渡益に対する課税は、昭和28年から平成元年までは、一定の要件(回数、株数、事業類似)を満たす売買を除いて、原則、非課税でした。理由は、株式投資を促し、国民のお金を企業に資本供給するのが狙いであったようです。
課税のきっかけは、平成元年の消費税の導入です。資産家優遇との批判を受けてのことです。課税方式は、申告分離課税(税率26%)と源泉分離課税(売買代金の1.05%)2択式でした。
その後、株式市場の低迷で市場のテコ入れの必要が迫られ、「貯蓄から投資」へのキャッチフレーズのもと、平成15年には、課税方式は申告分離課税のみ、税率も10%(所得税7%、住民税3%)に軽減、また、平成21年分の確定申告から上場株式等の損失と配当所得の損益通算が可能となり、現在に至っています。
◆今年中に上場株の売却か
幾度となく延長を繰り返されてきた軽減税率10%は、平成25年12月31日末をもって失効します。平成26年からの譲渡益には、本則の税率20%(所得税15%、住民税5%)が適用されます。
最近では、低迷していた株式市場も好転し、若干の乱高下はあるものの全般的に上げ相場です。手持ちの株式にも含み益がでてきましたが、来年になって売却すると、税金は今年に売却した場合の2倍になります。今年中に売却して1度利益を確定させることも選択肢としてあります。
◆上場株式の繰越損失と含み損
貯蓄から投資へのメッセージにのって上場株を購入し、株式に含み損を抱えている人、また、譲渡益と相殺できる控除可能な繰越損失を有している人は、値上がり益を狙って持ち続けるのも方策です。
また、含み損や繰越損失を抱えている非上場株式のオーナーの場合には、自社株を事業承継者等に売却して、その譲渡益と上場株の損失と通算することで譲渡益に係る税負担(20.42%)が軽減できます。
なお、平成25年度税制改正では、上場株式等の譲渡損益と非上場株式の譲渡損益との損益通算ができなくなっています。
◆短すぎる繰越損失の期間
上場株式の譲渡損失は、繰越控除できる期間は翌年以後の3年間ですが、海外では「期限なし」が主流です。この期間を少なくとも10年に延長してほしいですね。
解雇予告手当と和解金
◆解雇予告手当とは
使用者が労働者を解雇しようとする場合、少なくとも30日前に予告をしなければならない(労働基準法20条)と言う規定により、30日前の予告をしない場合は、30日に不足する平均賃金を支払わなければならない(10日前に予告した場合は、20日分以上の平均賃金を支払う)。この場合に支払われる賃金が解雇予告手当です。
解雇予告手当は、昭和23年8月18日付の基収第2520号において、「解雇予告手当は労働の対償となる賃金ではないから、必ずしも通貨支払、直接支払などの要件を具備しなくても差し支えないものと解されるが、労働者の予測しない収入の中絶を保護するものであるから、賃金に順ずるものとして通貨で直接支払うよう指導されたい」とのことから賃金ではないので社会保険料や労働保険料の対象にはならないとされてきました。
また所得税法においては、解雇すなわち退職を原因として一時に支払われるものであるところから賃金(給与所得)ではなく、退職所得に該当することとされています。
◆和解金とは?
解雇が使用者側と労働者側でもめて裁判になった場合に、双方が合意に達して支払われるのが和解金です。
和解金に関しては、その和解内容によって取り扱いが異なります。
◆賃金となる場合
退職時点が使用者側の主張より遅く、それまでの給与相当額で和解した場合や、残業代の未払い分として和解した場合は、賃金となりますので、その分については社会保険料も源泉税もかかってきます。
◆退職金となる場合
退職時点は使用者側の主張が認められるが、解雇予告手当等として、一時金を支払うことで和解した場合は退職金となりますので、退職所得として課税されます。
◆非課税となる場合
退職による精神的苦痛に対する慰謝料として支払われた場合は、全く税金はかかってきません。
和解金の場合は、その内容によって取り扱いが異なります。ご留意ください。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
川口 明彦 税理士事務所
〒410-2132 静岡県伊豆の国市奈古谷702番地の8
http://www.kaikei-home.com/kawaguchi/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
吹き抜ける風がなんとも心地よい季節となりました。
それでは、今月の事務所だよりをお届けします。
平成25年5月の税務
5/10
●4月分源泉所得税・住民税の特別徴収税額の納付
5/15
●特別農業所得者の承認申請
5/31
●3月決算法人の確定申告<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・(法人事業所税)・法人住民税>
●個人の道府県民税及び市町村民税の特別徴収税額の通知
●3月、6月、9月、12月決算法人・個人事業者の3月ごとの期間短縮に係る確定申告<消費税・地方消費税>
●9月決算法人の中間申告<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・法人住民税>(半期分)
●法人・個人事業者の1月ごとの期間短縮に係る確定申告<消費税・地方消費税>
●消費税の年税額が400万円超の6月、9月、12月決算法人・個人事業者の3月ごとの中間申告<消費税・地方消費税>
●消費税の年税額が4,800万円超の2月、3月決算法人を除く法人・個人事業者の1月ごとの中間申告(1月決算法人は2ヶ月分、個人事業者は3ヶ月分)<消費税・地方消費税>
●確定申告税額の延納届出に係る延納税額の納付
-----------------------------------------------
○自動車税の納付
○鉱区税の納付
株式譲渡課税の変遷
◆消費税の導入がきっかけ
株式譲渡益に対する課税は、昭和28年から平成元年までは、一定の要件(回数、株数、事業類似)を満たす売買を除いて、原則、非課税でした。理由は、株式投資を促し、国民のお金を企業に資本供給するのが狙いであったようです。
課税のきっかけは、平成元年の消費税の導入です。資産家優遇との批判を受けてのことです。課税方式は、申告分離課税(税率26%)と源泉分離課税(売買代金の1.05%)2択式でした。
その後、株式市場の低迷で市場のテコ入れの必要が迫られ、「貯蓄から投資」へのキャッチフレーズのもと、平成15年には、課税方式は申告分離課税のみ、税率も10%(所得税7%、住民税3%)に軽減、また、平成21年分の確定申告から上場株式等の損失と配当所得の損益通算が可能となり、現在に至っています。
◆今年中に上場株の売却か
幾度となく延長を繰り返されてきた軽減税率10%は、平成25年12月31日末をもって失効します。平成26年からの譲渡益には、本則の税率20%(所得税15%、住民税5%)が適用されます。
最近では、低迷していた株式市場も好転し、若干の乱高下はあるものの全般的に上げ相場です。手持ちの株式にも含み益がでてきましたが、来年になって売却すると、税金は今年に売却した場合の2倍になります。今年中に売却して1度利益を確定させることも選択肢としてあります。
◆上場株式の繰越損失と含み損
貯蓄から投資へのメッセージにのって上場株を購入し、株式に含み損を抱えている人、また、譲渡益と相殺できる控除可能な繰越損失を有している人は、値上がり益を狙って持ち続けるのも方策です。
また、含み損や繰越損失を抱えている非上場株式のオーナーの場合には、自社株を事業承継者等に売却して、その譲渡益と上場株の損失と通算することで譲渡益に係る税負担(20.42%)が軽減できます。
なお、平成25年度税制改正では、上場株式等の譲渡損益と非上場株式の譲渡損益との損益通算ができなくなっています。
◆短すぎる繰越損失の期間
上場株式の譲渡損失は、繰越控除できる期間は翌年以後の3年間ですが、海外では「期限なし」が主流です。この期間を少なくとも10年に延長してほしいですね。
解雇予告手当と和解金
◆解雇予告手当とは
使用者が労働者を解雇しようとする場合、少なくとも30日前に予告をしなければならない(労働基準法20条)と言う規定により、30日前の予告をしない場合は、30日に不足する平均賃金を支払わなければならない(10日前に予告した場合は、20日分以上の平均賃金を支払う)。この場合に支払われる賃金が解雇予告手当です。
解雇予告手当は、昭和23年8月18日付の基収第2520号において、「解雇予告手当は労働の対償となる賃金ではないから、必ずしも通貨支払、直接支払などの要件を具備しなくても差し支えないものと解されるが、労働者の予測しない収入の中絶を保護するものであるから、賃金に順ずるものとして通貨で直接支払うよう指導されたい」とのことから賃金ではないので社会保険料や労働保険料の対象にはならないとされてきました。
また所得税法においては、解雇すなわち退職を原因として一時に支払われるものであるところから賃金(給与所得)ではなく、退職所得に該当することとされています。
◆和解金とは?
解雇が使用者側と労働者側でもめて裁判になった場合に、双方が合意に達して支払われるのが和解金です。
和解金に関しては、その和解内容によって取り扱いが異なります。
◆賃金となる場合
退職時点が使用者側の主張より遅く、それまでの給与相当額で和解した場合や、残業代の未払い分として和解した場合は、賃金となりますので、その分については社会保険料も源泉税もかかってきます。
◆退職金となる場合
退職時点は使用者側の主張が認められるが、解雇予告手当等として、一時金を支払うことで和解した場合は退職金となりますので、退職所得として課税されます。
◆非課税となる場合
退職による精神的苦痛に対する慰謝料として支払われた場合は、全く税金はかかってきません。
和解金の場合は、その内容によって取り扱いが異なります。ご留意ください。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
川口 明彦 税理士事務所
〒410-2132 静岡県伊豆の国市奈古谷702番地の8
http://www.kaikei-home.com/kawaguchi/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
Posted by taxman at 09:27
│川口会計事務所だより