2015年02月03日

平成27年1月以後の「小規模宅地等の減額」の改正、事業承継した資産の償却方法

★ 川口明彦税理士事務所 事務所だより 2015年2月号 ★

寒気ことのほか厳しい毎日が続いております。
インフルエンザが流行しているようですので、
お気をつけください。

それでは、今月の事務所だよりをお届けします。

平成27年2月の税務

2/10
●1月分源泉所得税・住民税の特別徴収税額の納付

3/2
●前年12月決算法人(決算期の定めのないもの含む)の確定申告<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・(法人事業所税)・法人住民税>
●3月、6月、9月、12月決算法人の3月ごとの期間短縮に係る確定申告<消費税・地方消費税>
●6月決算法人の中間申告<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・法人住民税>(半期分)
●法人の1月ごとの期間短縮に係る確定申告<消費税・地方消費税>
●消費税の年税額が400万円超の3月、6月、9月決算法人の3月ごとの中間申告<消費税・地方消費税>
●消費税の年税額が4,800万円超の11月、12月決算法人を除く法人の1月ごとの中間申告(10月決算法人は2ヶ月分)<消費税・地方消費税>

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○前年分所得税の確定申告(2月16日から3月16日まで)
○前年分贈与税の申告(2月2日から3月16日まで)
○固定資産税(都市計画税)の第4期分の納付


平成27年1月以後に開始する相続 「小規模宅地等の減額」の改正


◆H27.1.1以後の「小規模宅地等の減額」
 
 平成27年1月1日以後に開始する相続に係る相続税について適用される基礎控除額の引下げ・税率構造の見直しによる税負担の増加を緩和するため、次の「小規模宅地等の減額」の改正が行われております。

(1)特定居住用宅地等の限度面積の拡大

(2)特定事業用等宅地等と特定居住用宅地等の完全併用


◆特定居住用宅地等は限度面積330㎡に拡大
 
 特定居住用宅地等の限度面積が240㎡から330㎡に拡大されました。これは大都市圏における「特定居住用宅地等」を適用している事案の平均値が約360㎡であることなど居住用宅地の実情に合わせた改正です。


◆「特定事業用等」「特定居住用」の完全併用
 
 小規模宅地等の減額を受けようとする宅地等が複数ある場合には、「特定事業用等宅地等」(特定事業用宅地等と特定同族会社事業用宅地等)、「特定居住用宅地等」と「貸付事業用宅地等」の限度面積を全体で調整する規定が設けられています。
 今回の改正後も次の算式により減額の適用ができる限度面積が調整されます(これを「限定併用」といいます)。

【算式】

特定事業用等宅地等の面積×200/400+特定居住用宅地等の面積×200/300+貸付事業用宅地等の面積 ≦200㎡
 
 今回の改正では、この算式によらず、「特定事業用等宅地等」と「特定居住用宅地等」のみである場合には「完全併用」できるという制度が設けられました。つまり、「特定事業用等」400㎡と「特定居住用」330㎡を合わせて730㎡まで制限なく適用できることになります。


◆小規模宅地等の「選択」が変わってくる
 
 「限定併用」の考え方では、減額金額が最大となる選択をする場合には、次の算式による「1㎡当たりの減額金額」を比較して大きなものから選ぶことになります。

・「特定事業用等」 1㎡単価×80%×400/200
・「特定居住用」  1㎡単価×80%×330/200
・「貸付事業用」  1㎡単価×50%
 
 ただ「完全併用」が導入されたことにより、1㎡の減額が大きな「貸付事業用宅地等」をあえて選択せず、「完全併用」を用いた方が有利なケースも出てきました。今後は「限定併用」「完全併用」の両者を計算して比較し検討する場面も出てきそうです。


相続以外の承継 事業承継した資産の償却方法

 相続により減価償却資産を取得した場合の取扱いについては、被相続人の取得価額、帳簿価額及び当該資産の耐用年数は引き継ぎ、被相続人が選択した償却方法は引き継がない、と定められています。
 このため、相続人が定率法を選択する場合には、新たに償却方法の届出が必要となります。


◆廃業した場合の償却資産の取扱い
 
 例えば、父が事業を廃業し、その生計を
一にする長男が父の事業を承継、父が事業の用に供していた店舗(当該店舗は父が旧定率法で償却していた)を無償で父から借り受けて事業の用に供した場合、長男の所得計算における上記店舗の減価償却費の計算はどの償却方法によるべきか、疑問が生じるところです。


◆課税当局の回答
 
 課税当局の回答は、「旧定率法」により計算する、です。
 その根拠は所得税法56条です。この規定からは、次のような解釈になります。
 親族(父)がその有する資産(店舗)を無償で当該事業(承継した長男)の用に供している場合、居住者(長男)の事業所得の額の計算上、必要経費に算入する減価償却費は、居住者(長男)と生計を一にする親族(父)が所得金額の計算上、必要経費に算入する減価償却費である、ということです。
 また、居住者の有する減価償却資産が年の中途において不動産所得、事業所得等を生ずべき業務の用に供された場合には、そのよるべき償却方法として旧定額法、旧定率法を選択している減価償却資産は、旧定額法、旧定率法等により償却費の額を計算することになっています。


◆回答に対する補足説明
 
 相続により減価償却資産を取得した場合の取扱いとは異なり、父の廃業後、その事業を承継した長男が父の所有する店舗を無償で事業に供しています。
 この場合、長男の当該事業に係る所得金額の計算上、必要経費に算入する減価償却費は、父が店舗使用の対価を受け取ったならば不動産所得の金額の計算上、必要経費に算入する減価償却費になります。
 したがって、この減価償却費の額は、父が選択していた方法、旧定率法により計算した減価償却費の額となります。結論は、償却方法は旧定率法、ということです。


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