2015年04月08日

外国上場株式等 課税方式と繰越控除、親の家屋に子が増築した場合

★ 川口明彦税理士事務所 事務所だより 2015年4月号 ★

しめやかに降る春雨はしっとりとした
心の落ち着きを取り戻させてくれますね。

それでは、今月の事務所だよりをお届けします。


平成27年4月の税務


4/10
●3月分源泉所得税・住民税の特別徴収税額の納付

4/15
●給与支払報告に係る給与所得者異動届出(市町村長へ)

4/30
●2月決算法人の確定申告<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・(法人事業所税)・法人住民税>
●2月、5月、8月、11月決算法人の3月ごとの期間短縮に係る確定申告<消費税・地方消費税>
●8月決算法人の中間申告<法人税・消費税・地方消費税・法人事業税・法人住民税>(半期分)
●法人・個人事業者の1月ごとの期間短縮に係る確定申告<消費税・地方消費税>
●消費税の年税額が400万円超の5月、8月、11月決算法人の3月ごとの中間申告<消費税・地方消費税>
●消費税の年税額が4,800万円超の1月、2月決算法人を除く法人の1月ごとの中間申告(12月決算法人は2ヶ月分)<消費税・地方消費税>
●公共法人等の道府県民税及び市町村民税均等割の申告

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○固定資産課税台帳の縦覧期間
(4月1日から20日又は最初の固定資産税の納期限のいずれか遅い日以後の日までの期間)
○固定資産課税台帳への登録価格の審査の申出の期間(市町村が固定資産の価格を登録したことを公示した日から納税通知書の交付を受けた日後60日までの期間等)
○軽自動車税の納付
○固定資産税(都市計画税)の第1期分の納付



外国上場株式等 課税方式と繰越控除

 株式等の譲渡による所得は、申告分離課税、すなわち、給与所得、不動産所得、事業所得、一時所得等といったこれらの所得とは区分して株式等に係る譲渡所得等の金額を計算し税額を算出します。そして、原則として、株式等に係る譲渡所得等の計算上生じた損失の金額(株式等内の譲渡益と譲渡損を通算してもなお残る損失)があるときは、当該損失の金額は生じなかったものとみなされています。
 株式等には、国内の証券取引所に上場されている外国株式や、外国の金融商品市場において売買されている株式のほか、外国法人が発行する出資持分、新株予約権付社債、転換社債などが含まれます。


◆外国株式の譲渡損益
 
 個人(居住者)が外国株式(上場、未上場を問わず)を国内で売却する場合でも、海外市場で売却する場合でも、売却したことによる所得で円に換算した所得金額は、国内株式と同様に「株式等に係る譲渡所得等」に分類され、「申告分離課税」の方法により所得税及び住民税の対象になります。
 一方、外国株式の譲渡で多額の譲渡損が生じた場合、当該譲渡損が未上場の株式に係るものである場合には、国内の未上場株式の譲渡損と同様、他の株式の譲渡益と通算されますが、通算後のなお当該株式に係る譲渡損が残る場合には、その損失は繰越すことができません。


◆譲渡損失の繰越控除
 
 国内の上場株式等の譲渡損失については、無条件ではありませんが、他の株式との損益通算後もその損失については繰越すことができます。
 そこで、外国の証券取引所で上場されている株式等を外国にある金融商品取引業者等に直接依頼して譲渡した場合の譲渡損について、繰越控除の適用ができかどうか、気になるところです。
 上場株式等の範囲には、外国金融商品市場において売買されている株式等も含まれていますが、上場株式等の譲渡損の繰越控除が適用できる上場株式等の譲渡は、当該譲渡が日本国内で営業する金融商品取引業者等を通じてなされたものでなければならない、とされています。
 したがって、外国上場株式等の譲渡損が繰越控除の適用対象となるためには、国内で営業する金融商品取引業者等を通じて売買をすることが不可欠です。



親の家屋に子が増築した場合


◆親の家屋に子が増築した場合
 
 親が所有する家屋を子の資金で増築するということがよくあります。この場合、増築後の登記状況等により贈与税が課税される恐れがあります。例えば、父が所有する木造平屋の家屋(時価1,000万円)に、子が家屋の時価と同額の1,000万円をかけて2階部分を増築したとしましょう。


◆民法における『付合』の考え方
 
 この場合、民法における『付合』の考え方を理解する必要があります。『付合』とは、別個のものがくっついて一つになるイメージになります。不動産の場合、『不動産の所有者は不動産に従として付合した物の所有権を取得する』(民242)とされています。
 この例では、父所有の家屋(主)に対して、増築部分が『付合』した物(従)とされれば、増築部分も父が所有権を有することになります。
 一般には増築部分が①事実上、分離復旧させることが不可能で、②2階部分だけ独立して取引できるような状態でなければ、『付合』したものと見られます(なお、増築部分が区分所有権の対象となるものについては、『付合』は生じません)。


◆『持分変更』で高率の贈与税課税を避ける
 
 今回の増築部分が区分建物として独立性がない場合、一般的には『付合』が成立し、増築部分の金銭負担者(子)と取得財産の名義(父)が異なることになります。そのため、子から父に対して1,000万円の贈与があったものして、父に高率の贈与税が課されます。もっとも、負担分=持分とする形(本事例では1/2)で登記することで、利益の移行がなかったものとして、贈与税課税を回避することができます。
 国税庁HPの質疑応答事例では、①旧家屋の持分2分の1を父から子に時価で譲渡し(本事例では1,000万円×1/2=500万円)、②その譲渡代金は、子が支出した増築費用のうち父の負担すべき部分の金額 (本事例では1,000万円×1/2=500万円)と相殺することで、贈与税の課税関係は生じないとする例を示しています。このように高率の贈与税課税を避けることはできますが、①の持分異動分については、父の譲渡所得を認識しなければなりません(この譲渡は親子間譲渡のため、居住用財産譲渡の特例等は適用できません)。同様のケースならば、登記及び譲渡の税負担を事前にシミュレーションしておくことをお勧め致します。


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川口 明彦 税理士事務所
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